平成13年4月2日 |
ヤマト運輸平成13年度入社式社長訓示(要旨) |
皆さんおはようございます。本日から皆さんはヤマト運輸の社員の一員です。9万人の社員を代表して心から歓迎をしたいと思います。この式典に参加している方は77名ですが、他に63名の方が支社、事業本部ごとの入社式に参加し、合計で140名の新入社員がヤマト運輸のメンバーに加わったことになります。若い力が注入され、その一人一人が持てる力を発揮することによって、ヤマト運輸の組織が活性化され、さらなる成長が促進されることを期待しています。 まず、今日は皆さんがヤマトで仕事をする上で、自らを成長させ、会社も成長させるために必要だと考えていることを3つ話します。1つはヤマトが事業を遂行していく上での憲法とも言うべき企業理念について。2つめは、ヤマト運輸を成長させるために当面の仕事の進め方について。3つめは、ヤマトの成長を担うべき皆さんが、プロの社会人として成長するためのアドバイスです。 |
1. | 企業理念について |
企業の目的は利益を出すことであると言っても過言ではありません。利益を出すことができなければ成長はおろか存続さえも危うくなるからです。しかし、利益を出せば何をやってもいいわけではありません。基本的な部分が間違っていると社会から強烈なしっぺ返しを受けて、存在を否定されてしまうことになります。この轍を踏んで昨年いくつかの企業が、社会からイエローカードを突きつけられたことは、皆さんもご存知だと思います。企業が事業を進める上で示さなければいけない方向性や考え方、それが企業理念です。 ヤマトの企業理念は「社訓」「経営理念」「企業姿勢」「社員行動指針」から構成されています。まず経営理念は「ヤマト運輸は社会的インフラとしての宅急便の高度化、より便利な生活関連サービスの創造、革新的な物流の開発を通じて豊かな社会の実現に貢献します」です。つまりこの領域で商売を拡大すると宣言しているのです。この経営理念を4つのフレーズに分けてお話します。 |
(1) 「ヤマト運輸は豊かな社会の実現に貢献する」 | ||
ヤマト運輸は、社会の豊かさを実現することで成長すると宣言しています。社会で生活をしている人が楽になったり、楽しくなったりするようなサービスを開発してお客様が喜ぶような応対を伴った商売をすると言うことです。逆に言えば儲かりそうだと思っても、社会の豊かさを実現することに貢献しないものには、手を出さないということも謳っていることになります。それを実現する具体的な手段は次の3つです。 | ||
(2) 「社会的インフラとしての宅急便の高度化」 | ||
宅急便を電気、ガス、水道や電話などの生活のインフラと同じように、お客様がストレスを感じることなく使えるように、高度化しようという気持ちが込められています。宅急便は、サービスを始めてから今年で25年目になりますが、帰省の手持ち荷物を減らしたり、クールで産地直送を享受したり、ゴルフやスキーに行くことが楽になったり、生活を便利にすることで、社会的インフラの一翼を担う立場になったことは間違いのないことだと思います。 これまでにも、平成10年11月に小笠原をエリア化したことによる全国ネットワークの完成や365日営業、時間帯お届けなどインフラとしての体制整備を続けてきました。しかし、今のサービスでは電気、ガス、水道のように使い勝手が良いとは言えません。インターネットなどを駆使して更に便利なものにしていかなければいけません。 |
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(3) 「より便利な生活関連サービスの創造」 | ||
ヤマト運輸は、先程話した帰省荷物や、ゴルフ、スキー、クール、時間帯お届け、往復など宅急便を高度化することによって、生活をより便利にするお手伝いをしてきました。これからもヤマト運輸の社員や営業所などの経営資源を活用すれば、家庭生活をもっと便利にするサービスが実現できると思います。高齢化社会の到来などが予想され、時代は今までにないニーズを要求してくるはずです。そのニーズを見つけてサービスを開発することができれば、ヤマト運輸をさらに成長させることができます。 | ||
(4) 「革新的な物流の開発」 | ||
昨年4月に物流システム支店を作り、今年の4月にはロジスティクス事業本部を作りました。目的は企業の物流の高度化をお手伝いすることです。日本の経済は生産者主導から生活者主導へと着実に変化しつつあります。生き残れる企業とは生活者一人一人の欲求を満足させることができる、すなわち多様なニーズに木目細かく対応できる生産と販売の仕組みを構築できたところだけです。このような背景を考えると、企業はお客様が欲する多様な商品をスピーディーに配送できて、流通在庫が少なく、できれば返品がなくてすむ輸送システムを求めているのです。 ヤマト運輸には宅急便やエキスプレスの輸送ネットワーク、ヤマトシステム開発の情報構築力、ベースに付属した保管スペースなどの機能があるのですから、この経営資源を活用すれば企業の物流の高度化のお手伝いができるのです。 |
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(5) 企業姿勢は次の8つの項目から成立っています。 | ||
[1]地域社会から信頼される企業 [2]お客様の満足 [3]生活利便の革新 [4]企業物流の貢献 [5]人命の尊重 [6]法の遵守と公正な行動 [7]パートナーとの調和と繁栄 [8]働く喜びの実現 この中から特に3つについて話します。 |
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最初は「お客様の満足」CS経営についてです。「ヤマト運輸は、常にまごころを込めた良質のサービスを提供し、お客様に満足をお届けします」。我々がが販売している商品は輸送サービスです。輸送を完結することはもちろんですが、ただ届ければ良いのではなく、荷物をお届けすることによって、お客様が喜んでくれることが大切なのです。また商品の高度化については、さらにたゆまぬ商品開発が必要です。お客様のニーズは常に変化していて、高いレベルが要求されています。これに応えることができなければ、お客様を失うことになります。 次は人命の尊重です。我々の商売は車を使って公道を走ることで成立っています。車を走らせれば交通事故という危険がついて回りますが、これは決して起こしてはいけない ことであり、最優先で事故防止に取り組んでいかなければいけないのです。会社では「安全第一、営業第二」と言っています。 「働く喜びの実現」についてです。「ヤマト運輸は、各人が自律性と自主性を発揮し、常に働く喜びに満ち溢れ、社員と家族が誇りを持てる企業を目指します」。サービス業であるヤマト運輸は人のパワーを販売するのが仕事です。人はやる気になった時に最大のパワーを発揮しますが、やる気になるのは一人一人が権限を与えられ自律性や自主性を持って仕事を進める環境にある時です。ヤマトでは個の考え方を「ダウンサイジング」「全員経営」というキーワードで表現していますが。ダウンサイジングは第一線への権限委譲、全員経営は、社員一人一人が経営者になったつもりで仕事を自律的に進めるということです。 |
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2. | 今年の仕事の進め方について | |
創立82周年で宅急便を発売してから25年目を迎えたヤマト運輸が、今期実現したいと思っているのは次の2つです。 一つは「配達品質の向上」。今年は「高品質創造3か年計画」の最終年度として成果が見えるようにしたいものです。具体的には配達品質でライバルに明確な差をつけることです。 サービス業とは生産と消費を同時に行なう商品ですから、不良品を事前に取り除くことはできません。すなわちミスを起こしやすい商売なのです。ミスを起こせばお客様は次からヤマトを利用してくれず、売り上げは減って行きます。ミスを起こしやすいのは配達の所が一番高いのです。配達のレベルを上げるには、仕事に携わっている人たちのレベルを上げていく行く必要があります。 二つ目は「ヤマトの構造改革」です。企業は永遠です。改革を続けられない企業には明日はありません。ヤマト運輸も宅急便で25年成長を続けてきましたが、このあたりで脱皮しなければいけません。明日のヤマト運輸のために、ネットワークや情報システム、人事など根本的な部分を見直していきます。 |
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3. | 入社の心構えについて | |
今まで日本における会社と社員の関係は、一般的に終身雇用と年功序列の人事制度を基本に成立ってきました。しかし、この内年功序列の人事制度は着実に変化し、崩壊しつつあります。ヤマト運輸でも、終身雇用は残しながら、年功序列を廃して役職昇進や賃金制度を実力主義というか成果主義に変えていこうと考えています。かつては、勤続が長くなれば自動的に役職に就いて、年齢給や勤続給が自動的に上がっていく仕組みになっていました。しかし、これからは成果によって地位もお給料も違ってくることになります。 皆さんは今日ここに横一線でスタートラインに並んだことになりますが、のほほんとしていると仲間から置いていかれ、昇進もお給料のアップも実現できなくなるかもしれません。そのようなことがないようにするには、着実に実力をつけていく必要があります。 実力をつけるには、身近な仕事上で明確な目標を作り、それを早期にクリアーする癖をつけることです。目標をクリアーすれば着実に実力がつきます。そうすれば階段を上がるように上位の仕事が処理できるようになり、それが達成感につながるのです。 達成感が感じられるようになれば、その内にだんだん仕事が楽しくなって、苦労を苦労と感じなくなります。これが更に仕事の成果につながり実力を加えて、成長していくことになるのです。 このような良い循環が有能なプロのビジネスマンを育てることになるのです。皆さんには是非頑張って欲しいと思います。 |
以上 |
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