旧郵政省時代の通達や解説書は、下記の通りである。
  なお、これらは、郵政省郵務局企画課内郵便法令研究会編「郵便関係事務提要 追録第105〜107合併号」(平成10年10月30日 株式会社ぎょうせい発行)より転写しており、各タイトルの後ろに括弧書きで明記した漢数字は前掲書の該当頁数のことである。
 
− 記 −
 
「あて名付ダイレクトメールの宅配業務に関する郵便法の解釈運用について」(六二)
   (平成元、二、一七郵企第二三号 郵務局長から地方郵政局長等へ通達)
 
  郵便法(昭和二二年法律第一六五号)では、その第五条第一項に郵便の業務の独占が、同条第二項以下に信書送達の独占が、それぞれ定められている。
  これは、同法第一条に定める「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進する」という郵便事業の責務を達成するため必要と考えられる範囲で信書送達や、郵便と誤認されるような営業混同行為を禁じたものと解される。
  また、この郵便法の運用は、条文に従い、法の目的・趣旨、判例などを踏まえて、前記の郵便事業の責務をまっとうするため何が必要か、という見地からなされるものである。
  このような基本的な考え方に照らした場合、最近行われるようになった民間のあて名付ダイレクトメール宅配事業は、それが全国的に蔓延すれば、比較的量も多くコストのかからない近距離あての郵便物はことごとく蚕食され、そうでない遠距離あて郵便物のみが郵便として残り、全国均一料金制や簡便なポスト投函という郵便制度の根幹が侵されることとなる。
  そこで、あて名付ダイレクトメールの宅配業務は今後、左記により、その内容の如何にかかわらず違法なものとして扱うこととするので、了知されたい。
  なお、従前の通達中本通達に抵触するもの(該当する部分に限る。)は自然消滅のこととする。
 
  あて名付ダイレクトメールの宅配業務は、その配布物が封書、葉書形態をとるなど形状、外観から郵便物と誤認されて、郵便局に誤配の苦情が持ち込まれ郵便の信用が損なわれる等営業混同行為に該当する。(郵便法第五条第一項違反)

  あて名付ダイレクトメールは、その内容たる文書自体により発信者、受信者を知ることができなくとも、これを封入したあて名の記された封筒(葉書形式の場合は表にあて名のあるもの)とあわせて特定人に対する意思表示あるいは事実の通知であることが判明するので、信書に該当する。(郵便法第五条第二項違反、明弘会郵便法第五条違反事件判決)

 
「貨物に添付できる添状の範囲等」(六二〜六三)
   (平成元、五、一郵企第二七号 郵務局長から地方郵政局長等へ通達)
 
  従来、法第五条第三項に規定する添状とは、その内容たる物自体の性質や一般的な使用方法等の簡単な説明書の類のこととされていたが、貨物の送付と密接に関連した次に掲げるもので、その貨物に従として添えられるものも添状として貨物に添付できることとする。
 
(一) 貨物の処理に関する簡単な通信文
    これは、ポスターの掲出依頼、送付物品の配布先の指示等物品送付後の処理に関する指示の類のことである。
(二) 貨物の送付目的を示す簡単な通信文
    これは、物品を送付した趣旨、書籍の発行趣旨又はポスターの作成趣旨の類のことである。
(三) 貨物の授受又は代金に関する簡単な通信文
    これは、物品の授受方法又は物品の代金支払い指示の類のことである。
  なお、これには、納品書、請求書等の定型的書類含まれるものである。
(四) 貨物の送付に関して添えられるあいさつのための簡単な通信文
    これは、物品の送付に際して添えられる儀礼的又は慣習的なあいさつ文の類のことである。
(五) その他貨物に従として添えられる通信文であって、前記(一)から(四)までに掲げる事項に類するもの
  なお、以前に送付した書籍に係る請求書を送付しようとする物に添付する場合における当該請求書など貨物の送付に関連性のない信書(商品の送付通知とお得意様ご優待会の出席案内が並記されているものなど貨物の送付と密接に関連する信書と関連性のない信書が並記されているものも含む。)は、添状の範囲を超えるものであるので、貨物に添付することができないものである。
  おって、貨物に添付する送り状については、それを送付したことを通知する案内書のことで、送付される貨物の種類、重量、容積、荷造りの種類、個数、記号、代価、受取人並びに差出人の住所及び氏名など当該貨物の送付に関する事項が必要に応じて記載されたもの(従来解釈のとおり)のことである。念のため。
 
郵便法第二十一条の「解説」より抜粋(一四二)
[1] 「筆書」とは、いわゆる手書きであって、毛筆、ペン、鉛筆による記載はもちろん、炭酸紙による複写をも含むものであるが、本条ではさらに印章又はタイプライターによるものも含ませている。
[2] 「特定の人にあてた」とは、書状の内容が広く一般人に対するものでなく、ある定つた人に対するものであることを要する。特定された人は、自然人であつても法人であつてもよく、また、一人であつても、数人であつてもよい。
[3] 「通信文」とは、自己の意志を他人に伝え、又はある事実を他人に通知するために文字又は記号をもつてあらわされたものである。したがつて、すでに通信の目的を達した古手紙の類は、本状にいう書状には該当しない。
 
「筆書した書状の定義について」(一四五・2)
   (昭和二六、一一、一六郵業第五二一号 郵務局から地方郵政局、郵便局(簡易郵便局を含む。)へ通達)
 
  筆書した書状には、特定の人にあてた通信文を紙に筆書したものばかりでなく、木片、布等どんな物件に筆書したものでも含まれるものである。
 
以上


閉じる | 「信書に該当する文書に関する指針(案)」に関する当社の意見