平成16年4月1日

ヤマト運輸株式会社 平成16年度入社式社長訓示(要旨)

皆さん、入社おめでとうございます。11万4千人のヤマト運輸社員を代表して心より歓迎の意を表したいと思います。昨年の就職戦線は大変厳しかったと聞いています。その中でヤマト運輸と縁があった皆さんに対して、今日はヤマトの歴史・現在の会社の状況・ヤマトの社員としての基本をお話ししたいと思います。

1. ヤマト運輸の歴史について
  ヤマト運輸は1919年11月29日に誕生しました。人間で言うと今年は85歳を迎えるので、ちょうど皆さんのおじいさんの年齢になります。しかしこれまでにも何度か仕事の中身を変えてきている会社です。
 
(1) 創業時、まだ牛車や馬車が主流の時代に、トラックで貸切輸送をしていました。
(2) 1929年からは東京〜横浜間で路線事業を始めます。関東一円にネットワークをつくりました。しかし、高度成長期に関東以外へのネットワーク拡大をしなかったために、大型大量長距離輸送のマーケットに乗り遅れます。そして、オイルショックが追い討ちとなり業績が悪化しました。
(3) 1976年、そうした状況の中で宅急便を始めました。わかりやすい料金体系・全国翌日配達・電話一本で集荷などが受け入れられ、多くの方に使っていただけるようになったのです。宅急便が開始して29年目を迎えようとしています。順調に成長してきましたが、何も手を打たなければ衰退してしまう可能性もあります。
   
2. ヤマト運輸の状況
  ヤマトは今、グループで新生進化3か年計画という中期経営計画を実施しています。今年はその最終年度にあたります。
 
(1) 宅急便
  宅急便は29年目を迎えます。商品のサイクルは30年という説もあります。誕生時には感動をもって受け入れられた宅急便も当たり前のサービスになりました。また、ライバルとの競争も激しくなっています。その中でお客様に選ばれるため、宅急便では昨年、マネジメント体制を変えました。お客様の身近なところにお店を出し、高品質なサービスを提供するためです。今、宅急便は幅のある"時間帯"指定でしかお届けができません。けれども世間には、"何時"という"時間"にこだわって、自分で荷物を運んでいるお客様がいます。そうしたお客様のニーズがまだまだ潜在しているのが宅配便市場だと思います。
(2) クロネコメール便を開始
  ある雑誌社から「ヤマトでも冊子を運ぶことができないのか」とお問い合わせをいただいたことから、始まったクロネコメール便。ヤマトにとってはkgのネットワークからgのネットワークへの挑戦でした。しかし、その後、たくさんのお客様に喜んで使っていただくことができています。特に昨年4月リニューアルして以来、対前年比で160%以上の成長を続けています。私たちがこの事業を始めたことによって、市場に競争原理が生まれ、結果的にお客様が喜んで下さっているのだと思います。
(3) グループ経営
  ヤマトグループは56社・13万人の社員から形成されています。グループ全体の事業をデリバリー事業(宅急便事業・メール便事業など)・BIZ−ロジ事業(ロジスティクス事業など)・ホームコンビニエンス事業(引越や家事代行などの生活支援サービス)・e−ビジネス事業(情報サービス)・フィナンシャル事業(決済など)に分け、今年から完全に体制が整いました。まだ、ヤマトグループは社会の役に立ちきっていない、と思います。グループ全体でお客様に喜んでいただけるよう事業を展開して行きます。
   
3. ヤマト社員としての心構え
  まだ、正式な発表ではありませんが、昨年度は宅急便の取扱個数で10億個を超え、売上も1兆円を突破しました。大変、感慨深いことです。さらに成長するために、今日、皆さんは入社されました。
 
(1) 社訓
  ヤマトには「一、ヤマトは我なり 一、運送行為は委託者の意思の延長と知るべし 一、思想を堅実に礼節を重んずべし」という社訓があります。最初の「ヤマトは我なり」は全員経営の思想です。今日も桜がきれいに咲いています。桜は一輪ずつが頑張って咲き、木全体で春を豊かに演出してくれます。ヤマトもそれと同じで一人ひとりが経営者となり、全体をもりあげていく会社です。また、「運送行為は委託者の意思の延長と知るべし」は まさに顧客第一を表しています。私たちの会社はロマンと使命感をもって1つ1つの荷物を扱っています。10億個の荷物1つ1つに送り手・受け手の想いがあることを忘れてはいけません。そして最後の「思想を堅実に礼節を重んずべし」はまさに、遵法精神つまりコンプライアンス経営を表しています。この3つがヤマトの成長の根底にあるのです。皆さんもしっかり理解してください。
(2) 経営理念
  ヤマトの経営理念は「ヤマトグループは、社会的インフラとしての宅急便の高度化、より便利な生活関連サービスの創造、革新的な物流の開発を通じて、豊かな社会の実現に貢献します。」です。私たちは経済的な利益だけではなく、社会の役に立つことを目指していることを皆さんもしっかり認識してください。
今日から皆さんは社会人をスタートさせました。まだヤマトのことを知りません。しかしそれは同時に、お客様の立場に一番近いということです。今、持っている感性を大切に仕事をしてください。また、「心をここに置く」ことを大事にして、「心ここにあらず」にならないようにしてください。「"今"に集中する」ことを大切にしてもらいたいと思います。 昨日、松井選手がホームランを打ちました。私は松井選手の大ファンなのです。彼は心をここに置く、ということができる人だと思います。一球に対する集中力はものすごいものがあります。たとえ物理的に同じ時間を過ごしても、集中するかしないかで大きな差がうまれます。話す時・聞く時・仕事する時・遊ぶ時…、全ての場面で"今"に集中し充実した時間をすごしましょう。皆さん、ヤマトと一緒にこれから大きく成長していきましょう。期待しています。よろしくお願いいたします。
以上


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