平成18年4月3日

ヤマトホ−ルディングス株式会社・平成18年度グル−プ入社式社長訓示(要旨)

  皆さん、入社おめでとうございます。ヤマトグル−プの社員を代表して皆さんにご挨拶を申し上げます。今日はヤマトの歴史・ヤマトが現在置かれている状況と今後の方向性・社員としての心構えをお話したいと思います。


1. ヤマトの歴史について
 

ヤマトは1919年に誕生し、今年87年目であります。トラックが全国に200台しかなかった時代に、トラック4台で運送業を始め、その後約10年ぐらいは貸切業をやっていました。

1930年に新しいビジネスを始めました。関東一円で定時定路線積み合せの路線便(ヤマト便)を始め非常に大当たりしました。当時の輸送モ−ドといえば、馬・牛・人力が当たり前で荷物の移動範囲も狭く、経済圏は非常に小さいものでした。そのため荷物を1個単位で取り扱うトラック輸送は画期的で、荷物の移動範囲も広がり、経済圏が拡大しました。ヤマト便は世の中にとって便利であり、流通革命をもたらし、広域で荷物が動くようになり経済全体が活性化しました。(ヤマトの1度目の流通革命)

ヤマトが流通革命を起こした事で世の中が便利になり、そのリタ−ンがヤマトにもたらされました。1930年の30万円という売上から、1975年には350億円という売上になっていました。世の中のためになるサ−ビスや商品を提供することで成長し、利益も残るようになりました。

ところが、1975年は350億円の売上でありましたが、利益は3,000万円で利益率が0.1%と経営が悪化していました。オイルショック後の1975年には関東一円で提供するヤマト便が陳腐化して、世の中のニ−ズと背離していました。利益の残らない会社となってしまいました。

1976年、「宅急便」の開始。(ヤマトの2度目の流通革命)

その当時、個人から個人への荷物を扱っていたのは郵便局だけであり、約1億7,000万個を扱っていました。ヤマトは個人から個人への荷物を「1個でも集荷する」「翌日配達」と郵便局よりも1段レベルアップさせて、流通革命を起こしました。例えば、帰省の時には、荷物を抱えて新幹線乗り込まずに、宅急便で送るようになったり、果物が生産者から個人へ直接届くようになりました。

宅急便は、ヤマトにも急成長をもたらし、CtoCからBtoB・BtoCや通信販売へ市場が広がり、宅急便のインフラに乗った新しい産業も生まれてきました。

ヤマトが世の中に流通革命を起こして、世の中に便利さを提供して、そのリタ−ンが我々のところに帰って来て、株主・社員・取引先・地域に対してもリタ−ンができるようになっています。1975年の350億円の売上から2005年は1兆1,000億円を超えるところまでなりそうです。

2. ヤマトの置かれている状況と今後の方向性
 

ヤマト便の成功で、世の中のニ−ズの変化への対応に遅れをとって、ライバル企業と比べると負け組になってしまいました。

ヤマトは定時定路線積み合せの小口貨物を最初に始めましたが、西濃運輸・福山通運・日本運送などの企業も同様の商売を始めました。ヤマトは関東一円のみでヤマト便をやっておりました。1930年代は50kmも離れた所は経済圏ではありませんでしたが、その後日本経済も発展をして、日本全国が1つの経済圏的な形となり、ヤマトは時代に着いていけなくなって、あわや潰れそうになっていました。

それを思い返してみると、現在の宅急便は1976年から始めて、今年が30年目です。。まだ勢いはありますが、片側では郵便事業で2兆円の売上、保険や貯金も含めた郵政公社全体で営業利益が2兆円の組織が民営化されてきます。このまま宅急便だけではヤマトの成長は確保できません。

ヤマトグル−プが去年11月にヤマトホ−ルディングスという会社になりました。

去年11月までのヤマト運輸という会社は、売上の8割(8,000億円)がデリバリ−事業でやっている会社で、それ以外の会社は全部で2割(2,000億円)であります。

宅急便を30年間、商売してきてものすごく大きな経営資源を持った会社となりました。

ヤマト運輸のコンピュ−タ−ネットワ−クは日本で指折り数えるぐらいすばらしいものではないかと思います。365日24時間稼動でバックアップ体制もあるので、このネットワ−クを使ってもらって商売にしていきたいと思います。

また、ヤマトロジスティクスという会社は、宅急便の配送ネットワ−クを活用して企業の合理化を提案することができます。例えば、荷主企業の在庫を減らす多頻度少量の効果的な流通のしくみを創ってお客様に提供することです。

これからは、宅急便で蓄積した経営資源を使った新しいビジネス(ビジネスユニット)をたくさん創っていきます。その一つ一つがどこにもない商品、ナンバ−1の商品で、お客様の顔が見える市場へ販売していきます。小さく生んで、一つ一つを育てていきます。

3. 社員としての心構え
 

サ−ビス業は難しいと思います。メ−カ−は事前に検品作業ができるので世の中に不良品を出すことはありません。しかし、サ−ビス業のヤマトは、荷物をお届けしたときに生産と消費が同時に起きるという商売であります。人間が提供する商売であり、ミスを事前にチェックできない商売でです。「ミスを起こしやすい商売でミスをすると、お客様が見えないうちにどんどん逃げていく」ので、お客様に不満を与えないようにします。「お客様に喜んでもらうことが、我々の使命」であり、日々の仕事の拠り所である事を、きちっと覚えてほしいと思います。

その上で、必要なことは「挑戦(challenge)」であると思います。

仕事を覚えること、いい仕事をすること、新しい仕事を身に着けること、に対してきちんとした目標を持って挑戦していただきたいと思います。
 
以上


閉じる  |   平成18年度入社式のお知らせ