NEWS RELEASE
ヤマトホールディングス
ヤマト運輸株式会社

平成25年11月28日

「クール宅急便」の温度管理に関する調査結果、
および今後の再発防止策について

「クール宅急便」の温度管理に関する調査結果、および今後の再発防止策について、下記の通りご報告いたします。

このたびは、お客さまの信頼を裏切り、ご迷惑、ご心配をおかけしたことをあらためて心からお詫び申し上げます。二度とこのような事態を招かぬよう、全社を挙げてさらなる品質の向上と、信頼の回復に努めてまいります。

1.今回の調査および再発防止策検討の経緯について

10月25日、弊社の拠点において社内ルールに反した「クール宅急便」の仕分けが行われていたとの報道を受け、全拠点に対し、クール宅急便の運用ルールの徹底を指示するとともに、電話による緊急聴き取り調査を行ったところ、「仕分けルールが徹底できていない」拠点が約200カ所あることが判明しました。

弊社では、同日、社長を総括本部長とし、各担当の役員、および部・課長と労働組合幹部で構成し、西綜合法律事務所をアドバイザーとする「クール品質改善対策本部」を設置。さらに詳細な調査を実施し、原因究明を行うとともに、その調査結果をもとに再発防止策を検討いたしました。

2.今回実施した調査について

「クール品質改善対策本部」では、実態をより正確に把握するため、全国3,924の拠点および、70の主管支店を対象に「クール宅急便」の集荷、幹線輸送、仕分け、配達に至る全工程についての温度管理ルールの遵守状況を調査、再点検するため、10月26日〜11月15日の間、グループ面談や拠点への訪問、および電話による詳細な聴き取り調査を行いました。

また11月7日〜10日には全国10の支社において、弊社役員が各拠点、主管支店の責任者、および労働組合の地域支部役員から直接、事情や意見を聴取する機会を設けました。

さらに食品衛生の観点から、「クール宅急便」の集荷から配達までの全工程における温度管理ルールを客観的に評価するため、外気温による品温の影響について、第三者機関(東京家政大学・藤井建夫教授)に調査を依頼しました。

なお、10月25日以降、28名のお客様から「過去にクール宅急便を利用し、体調不良になったことがある」というお申し出をいただきました。体調不良を含む苦情については、個別に対応させていただいておりますが、10月25日より以前の期間も含め、因果関係が明らかになった健康被害はございません。

3.調査の結果について

(1) 「クール宅急便」の仕分けルールの不徹底について
  [1] 仕分けルールに関する調査結果
     調査の結果、「各コールドボックス(運搬用の冷凍・冷蔵庫)からの荷物の取り出しを5分以内に完了させる。その後、荷物を車載保冷スペースに積み込むまで、荷物を30秒以上、外気にふれさせない」という仕分けルールが徹底できていなかった拠点が253カ所(全体の6.4%)あることがわかりました。
     また、仕分けルールは徹底できていたが、荷物が急増した7月の繁忙期に、仕分けルールが守れないことが一度でもあったという拠点が1,269カ所(全体の32.3%)あることがわかりました。
  [2] 仕分けルールが徹底できなかった原因
     仕分けルールが徹底できていない主な原因は「仕分けルールの周知と教育が不十分だった」、「配達のエリアや、順序を考えて積み込むため時間がかかった」、「凍結した伝票の引き抜きに時間がかかった」でした。
     また、繁忙期に仕分けルールが守れないことが一度でもあったという拠点の主な原因は、「一時的に仕分け用の資材・機材が不足した」、「配達のエリアや、順序を考えて積み込むため時間がかかった」、「凍結した伝票の引き抜きに時間がかかった」でした。
(2) 「クール宅急便」の配達ルールの不徹底について
  [1] 配達ルールに関する調査結果
     調査の結果、「車載保冷スペース以外(例:台車での配達や車載保冷スペースの補完)での持ち出しは、クールコンテナを使用する。配達先へはコールドバックでお届けする」という配達ルールが徹底できていない稼働(セールスドライバーが車輌や台車などを使用して集荷・配達するコース)が10月(平月)の一日平均 約39,100稼働のうち、約5,100稼働(全体の13.0%)あることがわかりました。
     また、荷物の急増した7月の繁忙期に、配達ルールが守れないことが一度でもあったという稼働が、7月(繁忙期)の一日平均約44,600稼働のうち、約15,800稼働(全体の35.4%)あることがわかりました。
  [2] 配達ルールが徹底できなかった原因
     配達ルールが徹底できていない主な原因は「配達先がすぐ近くなので、コールドバックを使用しなかった」、「時間帯指定配達の集中や、複数口(例:一カ所へ10個以上の納品)の荷物が車載保冷スペースに入りきれなかった」、「サイズオーバー(120サイズ超)の荷物が車載保冷スペースに入らなかった」でした。
     また、7月の繁忙期に配達ルールが守れないことが一度でもあった稼働の主な原因は、同じく「配達先がすぐ近くなので、コールドバックを使用しなかった」、「時間帯指定配達の集中や、複数口の荷物が車載保冷スペースに入りきれなかった」、「サイズオーバーの荷物が車載保冷スペースに入らなかった」に加え、「車載用のクールコンテナなどの資材が不足した」、「車載保冷スペースが満載になった場合の配達ルールが徹底できていなかった」でした。
(3) 外気温による品温への影響について
   外気温による品温への影響について検証を依頼した東京家政大学の藤井建夫教授によると、外気温15度、20度、35度における「輸送中の品温変化」は、梱包形態や予冷の有無など各種条件の下で実験・調査した結果、品温が上昇を始める時間は、外気温35度の環境下で、冷蔵品(10度以下)の場合は約15分後から、冷凍品(−5度以下)の場合は約17分後からであることがわかりました。
   藤井教授からは「3種類の食材(野菜、魚、肉)ならびにクール宅急便の実輸送工程を模した環境、および外気温接触環境における試験結果を総合的に判断すると、ヤマト運輸における温度管理社内ルールは食品の品質・食品衛生上の観点から見て厳しく温度管理されている。食中毒菌のほとんどは至適増殖温度が37度前後の中湿菌で10度以下になると増殖できないものが多いことから、輸送過程における食中毒菌の増殖は考えにくく、従って輸送による直接的な人的影響は少ないと言える」との評価をいただきました。(別紙 資料1参照

4.原因と今後の再発防止策について

(1) 原因分析について  
  弊社では、今般の原因を大きく以下の4点と考えています。  
  各拠点にルールを周知・徹底し、正しい運用を促すための指導者が不在で、ルールの運用が拠点任せになっていた  
  業務量が増加する中、ルールの徹底と拠点の負荷の軽減を両立するための日常の点検、システムの導入、およびモニタリングなど、サービス品質を持続的に維持するための仕組みが不十分だった  
  特に繁忙期における抜本的な対策の検討が不十分だった  
  お客さまの視点に立ち、拠点の声に耳を傾け、常に改善に取り組む姿勢が不十分だった  
(2) 再発防止策について  
  今後は、上記の原因分析を踏まえ、  
  拠点の声に耳を傾け、経営が一体となってルールを守り、品質を持続的に維持、向上していくための人材の配置と体制づくり  
  「クール宅急便」の取扱量の増加に対応するための体制強化  
  品質を維持するための定期的なモニタリングと、ルールの見直し  
  「クール宅急便」の総量管理制度の導入  
    の4点を中心とした再発防止策に取り組む所存です。  
       
  具体的な内容は以下の通りです。(別紙 資料2参照  
       
  [1] 拠点の声に耳を傾け、経営が一体となって品質の維持、向上に取り組む体制づくり  
   
(ア) 本社「クール宅急便品質管理対策推進室」の設置
   11月1日付けで、本社に社長直轄の「クール宅急便品質管理対策推進室」を設置しました。「クール宅急便」のサービス品質の維持、向上に専任で取り組みます。
(イ) 全国への「品質指導長」職の配置(別紙 資料3参照
   各主管支店長の下に、品質に特化した専任者として「品質指導長」職を新設し、157名を12月1日付けで全国に配置します。各拠点を巡回し、仕分け、配達ルールの周知・徹底・指導、および機材・資材の充足状況の点検を担当するとともに、社員とのコミュニケーションを円滑化し、サービス品質の維持、向上に向けた拠点からの提案が、確実に支店長、主管支店長、および本社に共有される体制を整えます。報告内容は「クール宅急便品質管理対策推進室」が、労働組合と連携しながら検討し、改善策や好事例を速やかに全社に展開します。
(ウ) 各拠点での「クール宅急便 作業リーダー」の任命
   全拠点に「クール宅急便 作業リーダー」を任命し、品質指導長と連携しながらクール宅急便のルールの周知、徹底と、日々の作業の適切な運営を行います。
(エ) 社内教育の充実
   「クール宅急便」の仕分け、集荷・配達ルールについて、各拠点の管理職(約7,500名)を対象とした研修と、全拠点の社員を対象としたDVDの閲覧による教育を完了しました。今後は新人に対しても閲覧による教育を義務付けます。さらに作業マニュアルも、作業員の意見を反映し、よりわかりやすい内容にするため適宜、改訂を行います。
   また、「クール宅急便品質改善ダイヤル」を再周知し、本社に直接、意見や問題を話しやすい環境を整えます。
 
  [2] 「クール宅急便」の取扱量の増加に対応するための体制強化  
   
(ア)  クール宅急便「到着量見える化」システムの導入
   各拠点が「クール宅急便」の到着量を事前に端末で見ることができるようにして、受け入れ体制を整えやすくするシステムを開発、導入します。
   全社的にも荷物の流動量や流動エリアの「見える化」を推進し、荷物の流動量の予測に基づく、的確な体制強化を図ります。
(イ)  新しい機材、車輌の開発、および導入
   「クール宅急便」の取扱量の増加をふまえ、可変式の車載保冷スペースを装備した新車輌の開発、導入を進めます。また、古い機材・資材については適宜、新しい機材・資材に取り替えます。
 
  [3]品質を維持するための定期的なモニタリングと、ルールの見直し  
   
(ア) 定期的なモニタリングの実施
   「品質指導長」による日常のモニタリングにふまえ、客観的なデータや根拠に基づく恒常的な改善に取り組むため、拠点の仕分けエリアへのモニターカメラの設置(計3,061台)、民間 の調査会社など第三者による定期的な立ち入り調査(年間 1,000件)、および輸送中の温度を計測する温度ロガーによる定期的なモニタリング(月間 800件)を行います。
   各モニタリングの結果を踏まえ、時代や環境に適したルール作りを検討するとともに、ルールの不徹底が人員に起因する場合には、必要な教育、啓蒙、社内処分を行います。
(イ) 拠点における作業のIT化
   「クール宅急便」の伝票の引き抜き作業をポータブルポスにより自動化し、特に冷凍品の仕分け作業工程を簡素化します。
(ウ) 仕分け、配達ルールの見直し
   拠点からの聴き取り調査や、視察の結果をふまえ、現行のルールを踏襲しながら、より 作業しやすい内容にルールを見直します。
  <現行の仕分けルール>
   「各コールドボックスからの荷物の取り出しを5分以内に完了させる。その後、荷物を車載保冷スペースに積み込むまで、荷物を30秒以上、外気にふれさせない」
  <今後の仕分けルール>
   「各コールドボックスからの荷物の取り出しを5分以内に完了させる。荷物はクールコンテナに配達エリアごとに積み込み、荷物が30秒以上、外気にふれないように一次仕分けを完了する。その後、車載保冷スペースに積み込む。その際も荷物を30秒以上、外気にふれさせない」
  <現行の集荷・配達ルール>
   「車載保冷スペース以外での荷物の持ち出しは、クールコンテナを使用する。配達先へはコールドバックでお届けする」
  <今後の配達ルール>
   「車載保冷スペース以外での荷物の持ち出しは、クールコンテナを使用する。 複数の軒先にお届けする場合は、コールドバックやコールドシートなどでお届けする」
(エ) お客さまへの商品内容の周知
   「必ず予冷が必要であること」、「指定日配達ができないこと」、「荷物のサイズに制限があること」、「アイスクリームやバターなど、管理温度が−15度以下の商品の輸送には、ドライアイスを入れた梱包をお願いしていること」、「輸送中は短時間、外気にふれること」など、商品の内容を広くご理解の上、ご利用いただくよう、一層の周知徹底を図ります。
 
  [4] 新たな取り組み〜クール宅急便「総量管理制度」の導入  
     サービス品質の維持を最優先するため、特に繁忙期における「クール宅急便」の一日ごとの取り扱い可能総量を事前に見極め、総量の範囲内で荷物をお受けする「総量管理制度」について具体的な検討を開始し、来年7月までの導入を目指します。  
  D 12月の繁忙期対策について  
    既に全ての拠点で仕分け、配達ルールが遵守されていることをご報告するとともに、12月の繁忙期に向け、下記の対策を講じました。  
   
(ア) 機材・資材の配備
   特に車載保冷スペースの不足を補う「クールコンテナ」(計43,291本)をはじめ、荷物の急増に対応するための予備資材を全ての拠点に配備しました。
(イ) 「到着量見える化」システムの部分導入
   まず「複数口」および、年末に急増が予想される「おせち」について部分的に運用を開始します。これにより到着数量に合わせた人員、機材・資材の配置、および外部の保冷輸送会社との連携も含めた輸送モードのコントロールを行います。
(ウ) 荷受けルールの徹底と、一部の荷受け制限
   集荷・荷受け前の予冷を徹底していただくとともに、サイズオーバーの「クール宅急便」のご利用をお控えいただくなど、お客さまにもご協力をお願いしてまいります。
   また、既存のお客さまの荷物の品質管理に万全を期すため、本日より12月31日まで、スポットでの大量の「クール宅急便」のご用命をお断りする場合もございます。
 
     各拠点に役員が出向く「オフサイトミーティング」(気楽にまじめな話をする場)を定期的に開催し、拠点とのコミュニケーションを密にするとともに、グループネットワークの進化による各拠点の作業の軽減や作業時間の分散化を進めます。  
     またクール宅急便の「到着量見える化」システム、および「総量管理制度」の早期実現を通じて、さらなる品質の向上を目指してまいります。  

5.この度の事態を受けて

調査内容を厳粛に受け止めるとともに、お客さまに多大なご迷惑をお掛けした経営の責任を明確にするため、下記の通り役員の処分を行いました。


代表取締役 社長執行役員 1名 減俸6ヶ月間(月額報酬の10%)
代表取締役 常務執行役員 1名 減俸6ヶ月間(月額報酬の10%)
常務執行役員 1名 減俸3ヶ月間(月額報酬の10%)
執行役員 1名 減俸3ヶ月間(月額報酬の10%)
元常務執行役員 1名 減俸3ヶ月間(月額報酬の10%)
執行役員 10名 減俸3ヶ月間(月額報酬の5%)


以上

別紙:資料

YAMATO HOLDINGS CO., LTD.