NEWS RELEASE
ヤマトホールディングス
ヤマト運輸株式会社

平成26年10月20日

ヤマト運輸「安全運転教習プログラム」をマレーシアへ輸出

〜指導者向け「安全運転教習プログラム」の提供と
商業ドライバーを対象とするマレーシアの国家職業技能基準の共同開発について

マレーシア国内大手の民間自動車教習所メトロ社と包括契約を締結〜

メトロ社

 ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸株式会社(本社:東京都中央区・代表取締役社長:山内 雅喜、以下ヤマト運輸)は、マレーシアの国家的課題である多発する交通事故の削減に貢献するため、長年培ってきたヤマト運輸の交通安全指導ノウハウをパッケージ化した、指導者向け「安全運転教習プログラム」の提供と、商業ドライバーを対象としたマレーシア政府認定の国家職業技能基準(以下、NOSS)※1の共同開発に関して、マレーシア国内大手の民間自動車教習所METRO DRIVING ACADEMY SDN BHD(本社:Malaysia Subang・EXECUTIVE CHAIRMAN:AHMAD SHAH WADOOD、以下、メトロ社)※2と2014年10月20日に包括契約を締結したことをお知らせします。

1.背景

マレーシアの人口10万人あたりの交通事故死亡率は24.6人と、日本の4.5人の約5倍となっており、世界的にも交通事故死亡率の高い地域のひとつです。

2010年のマレーシアのナジブ首相による、交通事故の削減を国家的課題として取り組むという表明を受け、政府機関である人的資源省は、高い交通事故死亡率の一因となっている、トラックやタクシーなど商業ドライバーの運転技術と社会的地位の向上を目的に、2012年に商業ドライバーを対象にしたNOSSの導入を決定し、メトロ社はNOSSの開発プロジェクトに参画しました。

メトロ社は交通安全に関する専門的なノウハウを持つパートナーとして、マレーシアヤマト運輸株式会社(本社:MALAYSIA・取締役社長:山内 秀司)およびヤマト運輸の交通安全指導ノウハウを高く評価したことから、今回の契約に至りました。

ヤマト運輸は「安全第一、営業第二」の理念のもと、これまで培ってきた交通安全指導ノウハウをパッケージ化した、指導者向け「安全運転教習プログラム」をメトロ社へ提供し、NOSS の開発に協力していくことで、マレーシア国家が抱える交通事故問題の解決に貢献し、人々が安心安全に生活できる地域社会づくりを目指してまいります。

(出典:総務省統計局URL:新しいウィンドウが開きますhttp://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2013al.pdf

2.「安全運転教習プログラム」の提供について

(1) 概要
 

「安全運転教習プログラム」は、商業ドライバーに高水準の安全教育を行うための、指導者向け教習プログラムです。商業ドライバー個々の性格や行動特性を把握する「運転適性診断システム」を導入するとともに、ヤマト運輸の安全指導の専門職である安全指導長※3をマレーシアに派遣し、個々のドライバーに合わせた効果的な指導ノウハウはもちろん、長年にわたり蓄積してきたさまざまな交通安全指導ノウハウを直接伝授することで、指導者の安全運転教習力を向上させます。今回は第1ステップとして「運転適性診断システム」の導入と、4つの指導者向け「安全運転教習プログラム」を提供します。

(2) 運転適性診断システムの導入
 

これまでマレーシアでは、運転適性診断を活用した安全教育は行われていませんでした。今回、日本国内で実施しているヤマト運輸の運転適性診断をマレーシアの国民性や交通事情などに合わせてカスタマイズし、運転操作や視覚機能の測定、性格診断などを1台のパソコンにワンストップ化し、マレー語で受診できる独自の「運転適性診断システム」を開発、メトロ社へ導入します。商業ドライバー個人の特性を科学的に診断し、安全運転に対する意識の高さや周囲の交通状況に応じた適切な判断力などをデータ化することで、個人の長所と短所に合わせたきめ細かな指導が行える環境を整備します。個々の運転適性診断データは、指導者が容易に閲覧・出力できるとともに、商業ドライバーが誰でも簡単に受診できるよう、操作性に優れた最新のタッチパネル方式を採用します。

(3) 安全指導長による4つの「安全運転教習プログラム」
  [1] 運転適性診断データを活用した教習の指導
   

商業ドライバーが運転適性診断を受診すると、性格や行動特性、運転の留意点などを客観的に分析した運転適性診断データが出力されます。例えば、診断データで運転操作が遅れがちな傾向がある場合、車間距離を十分に取って走行するなど、指導者が商業ドライバーに事故を未然に防止するための適切なアドバイスが行えるよう、安全指導長は指導者に運転適性診断データの活用方法を指導します。

  [2] 個人の運転技術に応じた添乗教習の指導
   

添乗教習では、指導者が商業ドライバーに添乗し、発進時や走行中などに安全確認不足や運転操作に問題が無いかなど、個人の運転技術に応じた的確な安全指導を行います。安全指導長は指導者に、交通状況に応じた安全運転が行われているかを確認する、ヤマト運輸独自の添乗教習票の活用方法や適切な運転操作教習の方法を指導します。

  [3] 事故防止策を導くグループ教習の指導
   

グループ教習とは、これまでの事故事例を活用し、商業ドライバー同士が意見交換を行うことで事故の発生原因を究明、最適な事故防止策を導き出す、ヤマト運輸独自の教習方法です。安全指導長は指導者に、事故事例を活用したグループ教習の進め方を指導します。

  [4] ヤマト運輸独自の体験教習の指導
   

体験教習とは、敷地内に実際の運転場面を再現し、商業ドライバーが実体験することで、安全確認不足の場合どのような危険が潜み、何が事故の発生原因となるかを理解できる、ヤマト運輸が独自に考案した教習方法です。安全指導長は指導者に体験教習の方法を指導します。

 
日本国内での添乗教習の様子 日本国内での構内を使った体験教習の様子
日本国内での添乗教習の様子 日本国内での構内を使った体験教習の様子
(4) 「安全運転教習プログラム」のコースと料金

4つのプログラムの受講時間は計58時間で、全7日間のコースを基本としています。さらに指導者が「安全運転教習プログラム」を活用し、商業ドライバーへ的確な安全教育が行えているか、年3回のテストを実施するなど、万全なアフターフォローで、交通安全指導をサポートします。

「安全運転教習プログラム」の料金は、プログラムのライセンス使用料としての基本料金と、運転適性診断システムの使用頻度やプログラム毎の安全指導長の指導時間に応じた従量課金制です。メトロ社はノウハウの蓄積に要する手間や時間、コストを低減しながら、指導者の安全運転教習力を短期間で向上することができます。

3.「安全運転教習プログラム」の今後の展開について

マレーシア国内での安全運転教習は、教本などを使用した画一的な指導が中心ですが、今回は第一ステップとして、「運転適性診断システム」の導入と4つの指導者向け「安全運転教習プログラム」を提供し、運転適性診断データを活用した、個々のドライバーに合った効果的な指導が行えるようにします。

第二ステップは、マレーシア国内の交通事情にローカライズした「デジタル式運行記録計」を教習車両に搭載し、急発進や急ブレーキ、バック回数などの個人の「走行データ」を取得、運転操作・走行記録の「見える化」を図る予定です。ヤマト運輸では日本国内の集配車両の約32,000台に搭載している安全エコナビゲーションシステム「See-T Navi」※4を活用し、個別に効果的かつ具体的な安全指導を行うことで、導入以降、交通事故発生率は15%削減、日本国内の事業用貨物自動車と比較しても約半分の発生率と大きな効果を得ております。

2016年度には、クラウド型「ヤマト安全運転指導管理システム」の運用開始を目指します。ヤマト運輸が日本国内で1995年より蓄積している、交通事故の原因や発生時間などの事故状況、運転経験年数や睡眠時間などの運転者情報といった「安全管理データ」を活用。上記の「運転適性診断データ」・「走行データ」を「安全管理データ」と情報連携させることで、より精度の高い「安全運転トレーニングメニュー」を導き出し、指導者がより一層、商業ドライバー個人の運転特性に合わせた個別指導を行えるシステムを構築する予定です。

クラウド型「ヤマト安全運転指導管理システム」概念図
クラウド型「ヤマト安全運転指導管理システム」概念図

4.NOSSの開発について

メトロ社が参画したNOSSの開発分野は、商業ドライバーを教育する「指導者」のための技能基準です。今後、ヤマト運輸とメトロ社は指導者向け「安全運転教習プログラム」を活用し、NOSSに組み入れるべき技能基準を協議し、共同開発していきます。

マレーシア全土の安全教育水準を向上させ、商業ドライバーの安全運転技術の向上と交通安全意識の醸成を図ることで、マレーシア国家の抱える交通事故問題の解決に貢献していきます。

※1 NOSS(National Occupational Skill Standard)
 

NOSSとは、マレーシア国内における特定の職業の就業者に対して、職業能力を評価し、5段階の技能認定を行うための基準です。これは国家資格であり、技能認定を取得するためにはNOSSの認定を受けている訓練機関で、NOSSの基準に沿った訓練を受けなければなりません。NOSSは、国の発展に貢献するような人材を育成し、グローバル競争に負けない産業を創っていくという役割を担っています。

※2 メトロ社
 

マレーシア政府機関である交通局より認可を受けたマレーシア国内大手の民間自動車教習所です。創立は1998年、スバンとプチョンを拠点とし、一般自動車教習の他、バスやタクシーといった旅客ドライバーや荷物を運搬する貨物ドライバーなどにも教習を行い、年間18,000人の商業ドライバーのライセンスを発行しています。マレーシア国内では教育水準の高い自動車教習所のひとつです。

※3 安全指導長
 

ヤマト運輸は1974年(昭和49年)から集配をしない安全指導の専門職として、「安全指導長」を配置。現在、全国に約280名在籍しており、セールスドライバーの入社時安全教育のほか、担当拠点を巡回しながらセールスドライバーの添乗指導を中心に安全意識や運転技術の向上を図り、交通事故・労災事故防止に取り組んでいます。

※4 安全エコナビゲーションシステム「See T Navi」
 

Bluetooth・無線LAN機能など、パソコン並みの機能を搭載。国土交通省から認可されたデジタルタコグラフを採用し、法定三要素(車速、距離、時間)の取得・記録のほか、音声ガイダンス機能を備えており、急発進や急加速などの運転操作時は音声で警告します。また、エコドライブを推進するために燃費情報の提供などを行います。

詳細については下記URLをご覧ください。

http://www.yamato-hd.co.jp/news/h21/h21_79_01news.html

以上

YAMATO HOLDINGS CO., LTD.