平成27年9月11日
ヤマト運輸株式会社

 

総務省 情報通信審議会 郵政政策部会の答申(案)に対する当社の見解

当社は、公平で公正な競争条件(イコールフッティング)こそが、各事業者の創意工夫を生み、国民の利便性を向上させ、ひいては日本経済全体の活性化につながると一貫して主張してきた。

また、当社は、国民生活に不可欠なユニバーサルサービスを維持する上で、あらゆる経営努力をもってしても困難な場合に限り、最小限の優遇措置を講じることもやむを得ないと考えている。

しかし、今回の答申(案)でユニバーサルサービスとされている範囲は、本当に国民生活にとって不可欠な範囲なのかどうか、いまだ十分に議論が尽くされているとは言い難い。

ユニバーサルサービスの範囲が曖昧なまま優遇措置を講じることは、今後、拡大解釈がなされた場合、国民負担が増大するだけでなく、ユニバーサルサービス以外の領域のイコールフッティングをも阻害し、結果として国民の利便性の低下につながりかねない。

当社は、国民の利益を第一とした考え方のもと、以下の通り見解を述べる。

・ユニバーサルサービスの範囲について国民の理解を得るべきである

第一に、ユニバーサルサービスの範囲はどうあるべきか、広く国民の理解を得た上で、厳格に明示されるべきである。

答申(案)では、郵便事業のうち、ゆうパック等の荷物・速達・代金引換・年賀特別郵便等を除く郵便全般をユニバーサルサービスの範囲としているが、信書と非信書の送達が混在している郵便事業全体ではなく、「信書の送達」のみに限定されるべきである。

また、答申(案)でユニバーサルサービスとされる範囲の収支を厳密に算出するべきである。

答申(案)では、赤字地域の赤字総額をユニバーサルサービスコストとみなした上で、各種の特例措置を検討するべきとしているが、国民に負担を強いる以上、どの事業・サービスが赤字であるのかを特定し、その収支が国民の誰もが確認できる透明性を確保するべきである。

・ユニバーサルサービスとされる事業は現在黒字である

第二に、日本郵便株式会社(以下、日本郵便)が本年7月31日付で発表した「業務区分収支(2014(平成26)年度)」では、答申(案)でユニバーサルサービスとされる「郵便業務等」「銀行窓口業務等」「保険窓口業務等」の各事業は全て黒字であり、赤字である「その他事業」を含め、全体でも黒字となっている。にもかかわらず、なぜ優遇措置が必要なのか。

これでは、貨物事業を含む「その他事業」の赤字を補填するための優遇措置であると受け止めざるを得ない。

・答申(案)のネットワーク事業の考え方は的確性を欠いている

第三に、答申(案)では郵便役務について「約8割の赤字の集配郵便局エリアのコストを、約2割の黒字の集配郵便局エリアの利益で賄っている」とし、赤字地域の赤字総額をユニバーサルサービスコストとみなした上で、各種の特例措置を検討するべきとしているが、この考え方は的確性を欠いている。

当社の「宅急便」をはじめ、ネットワーク事業に赤字地域と黒字地域が混在するのは当然であり、各事業者は優遇措置に頼ることなく、ネットワーク事業全体で利益を生み出し、インフラと顧客サービスを維持する責務を果たしている。したがって、ユニバーサルサービスの確保策も、これと同様に黒字地域と赤字地域が混在することを前提として、特定の事業・サービス全体が赤字の場合に限り、適用するべきである。

当社は、過去に実行された国営事業の民営化の例にならい、社会的インフラともいうべき郵便ポストや郵便局ネットワークを民間事業者へ開放することで利用率を向上させ、例えば電話事業のように接続料収入を得ることで、国民負担を増大させることなくユニバーサルサービスの安定維持を図ることは十分に可能であると考えている。

・日本郵便は現在でも民間事業者にはない優遇措置を受けている

第四に、日本郵便は既に、事業所税、固定資産税などの税優遇措置、車両の通行・駐車禁止規制の免除やEMSの通関優遇等、多くの優遇措置を受けている。これらの優遇措置がユニバーサルサービスの収支に与えている影響が全く明らかにされていないにもかかわらず、新たな優遇措置を追加する必要があるのか、はなはだ疑問である。

・ユニバーサルサービスの確保策は公平公正に適用されるべきである

第五に、仮にユニバーサルサービスを確保するために優遇措置を講じる場合、あらゆる事業者にとって公平公正に実施されるべきである。

高い参入障壁があるとはいえ、日本郵便以外の事業者にも信書市場への参入の道が開かれている以上、そのユニバーサルサービスの確保策は、日本郵便に限定されることなく、ユニバーサルサービスを提供する各事業者に公平公正に適用されるべきである。

したがって、ユニバーサルサービスコストの試算は、そもそも日本郵便一社のコスト構造に基づいて算出されるべきではないし、それに対する国の施策も日本郵便一社を前提に決定されるべきではない。

以上の理由により、答申(案)は、ユニバーサルサービスの確保という名目の下、ユニバーサルサービス以外の事業まで含めた日本郵便に対する優遇をさらに強めることに議論をすり替えているといわざるを得ない。日本郵便が、貨物事業をはじめ様々な事業を一体的に運営している以上、例えば、現状は郵便局舎全体に対して適用されている現行の税優遇措置は、本来はユニバーサルサービスに関わる事業に限定した上で、その割合に応じて適用されるべきものである。

国民生活に不可欠なユニバーサルサービスの範囲が曖昧なまま、ユニバーサルサービス以外の領域にまで及ぶ新たな優遇措置を追加することは、貨物市場における公平で公正な競争条件(イコールフッティング)をさらに阻害する可能性が生じ、規制緩和の流れに完全に逆行する。

まず、郵便事業と貨物事業の会計分離を厳格化するべきである。次に、郵便事業に含まれる各事業・サービスごとの収支状況を徹底的に開示するべきである。その上で、ユニバーサルサービスとして維持するべき事業・サービスを特定し、それが全体としてやむを得ず赤字となる場合に限り、最小限の優遇措置を公平公正に実施するべきである。

以上