人権・ダイバーシティ
ヤマトグループは、「グループ企業理念」の「企業姿勢」において、あらゆる事業活動における人権の尊重を掲げています。また、国連グローバル・コンパクトの署名企業として、「国連グローバル・コンパクト10原則」や人権に関する国際規範※を支持・尊重しています。すべてのステークホルダーの人権に配慮した事業活動を推進するとともに、一人ひとりの「違い」(年齢、性別、国籍、障がい、性的指向および性自認など)や「価値観」を認めて、受け入れ、活かしあうことを指針として掲げ、一切の差別やハラスメントを禁止しています。
今、社会環境は大きく変化し、社会のニーズも急速に多様化しています。この変化に柔軟に対応していくためには、組織の中で活躍する人材も多様化していかなければなりません。
人権尊重やダイバーシティを推進することで、市場変化に強い国際競争力のある企業グループを目指します。
※国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、「国際人権章典」、「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」など
サステナビリティの指標と目標(2026年度)
- 全社員対象の人権ハラスメント教育受講率:100%
- 女性管理職比率:10%
- 障がい者雇用率:3.1%
その他の詳細の目標や進捗実績はサステナビリティ戦略・目標と実績をご参照ください。
推進体制
ヤマトグループは、人権尊重をさらに推進するため、EX推進委員会および人権・ダイバーシティ部会を設置しています。人事担当の常務執行役員が責任者となり、委員長・部会長を務めています。ヤマトグループにおける人権課題に関する施策の検討や進捗確認を行い、人権意識向上に努めています。
人権・ダイバーシティに関する方針
ヤマトグループ人権方針
ヤマトグループは、経営理念に掲げている「豊かな社会の実現」に向けて、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、2021年に「ヤマトグループ人権方針」を定めました。取締役会の決議を経て、ヤマトグループの人権尊重への意図や方向性を示したコミットメントです。本方針に基づき、人権尊重への取り組みを強化していきます。
ダイバーシティ基本方針
社員の多様性を尊重し、いきいきと活躍できる職場環境の整備や多様な人材の育成を目指し、「ダイバーシティ基本方針」を定めています。ヤマトグループのDNAである「全員経営」の考え方のもと、多様な人材がいきいきと活躍できる職場環境の整備と、多様な人材の育成により、グループ全体でダイバーシティを推進しています。
人権デューデリジェンス
ヤマトグループは、社会的インフラ企業として、豊かな社会の実現に持続的に貢献することを使命としています。お客様、ビジネスパートナー、地域社会、国内外で働く従業員など、多様なステークホルダーと協力して事業を営む中で、人権を尊重することは企業としての責務と認識しています。
当社はサプライチェーンを含むすべての人の人権尊重に取り組んでいくために、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の手順に従って、人権への負の影響を特定・防止・軽減・是正するための手続きを実施することで人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、企業としての人権尊重の責任を果たします。

人権影響評価
ヤマトグループは、人権デューデリジェンスプロセスの一環として当社の事業活動全体で人権影響評価を実施しており、潜在的な問題のリスクマッピングについて体系的な定期レビューを実施しています。
2024年度は、当社の事業が人権におよぼす潜在的な負の影響評価を実施し、自社およびサプライチェーンに対するヒアリング、調査を行い、人権課題を特定しました。特定された人権課題については、国際機関などが公表している人権リスク指標に基づき、深刻度と発生可能性を算出、マッピングすることで人権リスクを評価し、課題に対する取り組みを実施することでリスクの軽減を図っています。人権課題の特定においては、外部専門家の支援・助言を得て実施しています。
| ステップ1. 人権課題の整理・調査 |
|
|---|---|
| ステップ2. 人権課題の特定・評価 |
|
| ステップ3. 優先的に取り組む課題の特定 |
|
* 公益財団法人人権教育啓発推進センター「今企業に求められる『ビジネスと人権』への対応 『ビジネスと人権に関する調査研究』報告書」参照

人権影響評価の結果、深刻度・発生可能性の特に高い以下の6項目を優先的に取り組む人権課題として特定しました。
・パワーハラスメント
・救済へアクセスする権利
・労働安全衛生(社員の健康・職場の安全)
・差別
・生活賃金
・過剰・不当な労働時間
主な人権リスクに対する緩和の取り組み
人権影響評価の結果、優先的に取り組む課題として特定した人権リスクの緩和のために実施した取り組みは以下の通りです。
| 人権リスクの項目 | 緩和措置の概要 |
|---|---|
| パワーハラスメント・差別 |
|
| 救済へアクセスする権利 |
|
| 労働安全衛生(社員の健康) |
|
| 労働安全衛生(職場の安全) |
|
| 生活賃金 |
|
| 過剰・不当な労働時間 |
|
また、ヤマトグループ中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」において取り組む事項と目標を設定し、着実な目標達成を目指しています。詳細は「サステナビリティ戦略・目標と実績」をご覧ください。
モニタリング
人権デューデリジェンスを含めた当社のサステナビリティの取り組みは、社長が委員長である社会領域推進委員会でレビューを行い、取締役会に報告しています。
情報開示
すべてのステークホルダーを対象に、当社のWebサイト、統合レポート、有価証券報告書などで人権の取り組みを報告しています。
人権・ダイバーシティに関する教育
ハラスメント防止研修
ヤマトグループは、すべての従業員に「グループ企業理念」の小冊子を配布し、人権に関するグループの考え方や人権を尊重することの大切さを啓発しています 。 また、グループ共通のハラスメントハンドブックの製作や、全社員を対象とした人権の理解とハラスメントの防止を目的とした教育を行っています。特に、管理職においては、動画を用いて、いじめやハラスメント等の人権に関する報告や相談を受けた際に適切に対応できるよう教育を行っています。
ユニバーサルマナー検定ヤマトグループオリジナル版の受講

ヤマト運輸は、社員のユニバーサルマナーの向上を図るとともに、人権・多様性を尊重する社会の実現に貢献するため、ユニバーサルマナー検定の受講を推進しています。
ユニバーサルマナー検定ヤマトグループオリジナル版は、障がいのある方のお困りごとや適切なサポートなどを学習できる他、荷物の受け取り・発送をする場面などを想定した、日々の業務に即した独自のカリキュラムで、管理職や役割者から受講を開始しています。 2024年度はフルタイマー社員約35,000名が受講し、通算で約58,000名の社員が受講を完了しました。
- ※ユニバーサルマナーとは
高齢者や障がい者など多様な方々へ向き合うための「マインド」と「アクション」です。ユニバーサルマナーの実践に必要な「マインド」と「アクション」を体系的に学び身につけるための検定が、ユニバーサルマナー検定((株)ミライロ※主催)です。
※(株)ミライロとは2021年に資本業務提携を締結しています。
人権・ダイバーシティの取り組み
ヤマトグループ:人権尊重の取り組み
ヤマトグループは、事業活動における人権に関するリスクや配慮すべき点について、外部の方とのエンゲージメントを行っています。2019年11月に実施したステークホルダー・ダイアログにおいて、国際労働機関(ILO)駐日事務所のプログラム・オフィサー田中竜介氏にお越しいただき、労働やサプライチェーンなどをテーマに幅広く人権に関するご意見をいただきました。第三者の立場からの貴重なご意見を、マテリアリティの特定や戦略の検討に取り入れるとともに、今後の取り組みにも生かしていきます。
LGBTQへの理解促進
運送業における制服の見た目は、他業種と比較して性差があまりないことから、性的マイノリティの方々が多く勤めているとも言われています。性的マイノリティの方々が今後いきいきと活躍できる職場環境を整備していくにあたり、全社員を対象にLGBTQの理解やSOGIハラスメント防止を目的とした教育をおこなっています。また、職場で働く上でのLGBTQに関する悩みや性的指向や性自認に関する本人からの相談、配慮や対応で困っている上司や同僚からの相談に対応する社外相談窓口を設置しています。相談窓口はプライバシーに配慮し当事者が安心して利用できるよう、LGBTQの知識と理解のある外部の相談員(LGBTQ当事者やカウンセラーなど)が対応しており、相談者本人の同意なく相談内容や個人名が会社に知られることはありません。
※LGBTQは、L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダー、Q=クエスチョニング/クィアの英語の頭文字から構成された性的マイノリティの総称のひとつ。
女性活躍推進
ヤマトグループでは、女性社員の活躍を推進するため、グループ各社で連携し、施策を展開しています。
ヤマト運輸(株)では、2024年度より、女性役職者を目指す社員に対し、キャリア開発支援を中心としたプログラムを展開しています。加えて、組織として個人の成長を後押しし、対象者個別の育成を計画的に実施するため、育成に関する協議の場(人材開発会議)を新設しました。対象者のキャリア志向を軸とした中長期的な経験付与を決定し、定期的な進捗確認を通じて、周囲からの育成支援を強化し、本人の意欲醸成とスキルセットに繋げています。


障がい者雇用
ヤマトグループは、その企業姿勢に「障がいのある方を含む社会的弱者の自立支援を積極的に行います」と掲げ、障がい者の雇用創出に継続して取り組んでいます。2025年3月時点の障がい者雇用数は3,113名、雇用率は3.35%です。
2025年度からは従来ヤマト運輸(株)で全国に配置していた障がい者雇用担当者の職務領域を障がい者福祉活動に拡げると共に、ヤマト運輸(株)以外のグループ会社にも担当者を配置。担当者が一堂に会す会議を定期的に開催することで、雇用推進に向けた課題や好事例の共有を行うことに加えて、関連団体((公社)ヤマト福祉財団、(株)スワン、(福)ヤマト自立センター)と連携した職域拡大・定着支援に取り組んでいます。また、全社員を対象に障がいのある方に対する合理的配慮の理解や自身の行動変容を促すための教育も実施しています。
ユニバーサルガイドラインの制定
ヤマトグループは、お客さまや社員がより安心して快適に利用できる施設設計を目指して、ユニバーサルデザインに配慮したガイドラインを制定しています。

ユニバーサルデザインの導入例


コミュニケーションボード
ヤマト運輸(株)では、聴覚障がいのあるお客さまや外国語ユーザーのお客さまをはじめ、全てのお客さまに安心・快適に宅急便サービスをご利用いただける環境を実現するため、イラストや文字を指差しするだけで宅急便の発送手続きなどができるヤマト運輸(株)独自開発の「コミュニケーションボード」を、2025年4月から、東京都内と関西エリアの767カ所の営業所に導入しています。


外国籍社員が活躍できる職場環境
ヤマトグループは、約8,000人の外国籍社員が働いています。外国籍社員向けに雇用や安全に関する文書や掲示物、作業マニュアルの多言語化(英語・中国語・ネパール語・ベトナム語)を実施しています。また、社員意識調査においても多言語対応を行い、外国籍社員の働きがいや働きやすさに対する意見を調査し、職場環境改善の取り組みに反映しています。
外国籍社員が誰一人取り残されることなく安心して能力を発揮できる職場環境を整備するため、2023年10月より多言語(英語、ネパール語、ベトナム語)に対応した相談窓口を設置しています。
| 国 | 在籍人数 |
|---|---|
| ネパール | 3,243 |
| ベトナム | 641 |
| スリランカ | 542 |
| 中華人民共和国 | 349 |
| ブラジル | 182 |
| 大韓民国 | 122 |
| フィリピン | 118 |
| その他 | 68 |
※集計範囲は国内連結会社および(株)スワン
定年後のライフプラン支援
定年を前にした社員に年金制度や定年後の働き方、退職後のマネープランの作成などについて案内する「ヤマトライフプランセミナー」を実施しています。セミナーには配偶者同伴で参加することができ、社員とその家族のセカンドライフへのスムーズな移行を支援します。
相談窓口
ヤマトグループのすべての社員が利用可能な、コンプライアンスに関するグループ共通の相談窓口(「企業不正通報窓口」、「コンプライアンス・ホットライン」「目安箱」)では、差別やハラスメントを含む人権に関する通報や相談も受け付けています。いずれのケースも、社内通報規程により通報・相談者が不利益を被ることなく保護されるよう留意しながら担当部署が調査を行い、社内規定に基づき対処・処分を行います。内部通報の対応内容は、定期的にコンプライアンス・リスク委員会および取締役会に報告しています。
また、お客さま向けにはe-メールやコールセンターによるお問い合わせ窓口を設置しています。株主・投資家向けにはホームページにてお問い合わせ窓口を設置しています。




