エネルギー・気候 ~気候変動を緩和する~

気候変動は国際社会の最重要課題の一つです。ヤマトグループは、「気候・エネルギー」を重要課題(マテリアリティ)の一つと特定し、環境方針のもと気候変動に対する取り組みを強化しています。2050年温室効果ガス(GHG)自社排出実質ゼロを目指し、2023年までの計画(環境中期計画2023)では、物流拠点などでの再生可能エネルギー由来電力の利用や輸送の高効率化、冷蔵・冷凍宅配用ドライアイスの削減などを進めています。

気候変動に対する考え方

ヤマトグループは、気候変動が持続可能な社会の実現とヤマトグループにとって重要な課題であることを認識し、気候に関わるリスクや機会、その影響を把握・評価しています。また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD*)の提言を基にした情報開示に努めています。ヤマトグループは、事業を通して気候変動の緩和と適応を図り、リスクを管理し、機会を創出することで低炭素社会の実現に貢献し、社会とともに成長する企業を目指します。

  1. *金融安定理事会(FSB)により2015年に設置され、気候関連の財務情報開示に関する勧告を2017年に提示している

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく開示は、「TCFD提言への対応」をご参照ください。

目標と実績

長期目標:2050年GHG排出実質ゼロ*

中期目標:2030年GHG排出量 2020年度比48%削減*

  1. *自社排出(Scope1とScope2)

中長期目標の詳細は、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向け2030年の削減目標を具体化」をご参照ください。

環境中期計画2023の目標と実績(サステナブル中期計画2023)
マテリアリティ 2023年度目標 2022年度目標 2022年度実績
エネルギー・気候
  気候変動を緩和する GHG排出量 2020年度比10%削減*1 GHG排出量 2020年度比8%削減 GHG排出量 2020年度比7%削減
GHG排出原単位 2020年度比10%削減*1*2 GHG排出原単位 2020年度比8%削減 GHG排出原単位 2020年度比6%削減
再生可能エネルギー由来電力40%使用*3 再生可能エネルギー由来電力拡大 再生可能エネルギー由来電力22%使用
海外連結子会社のGHG排出量2022年度比3%削減*4 海外連結子会社のGHG排出量に関するデータの把握、基準年データの取得 全ての海外連結子会社から環境データを取得完了
  低炭素輸送/事業所:
低炭素技術導入、運用効率化
他業種と共同でEVやFCVに関する実証試験の継続(長距離用中型トラック含む) 他業種と共同での新規EVやFCVの実証試験(長距離用中型トラック含む) 他業種と共同での新規EVやFCVの実証試験に向けた準備を完了
低炭素や大気汚染防止を目指した自動モビリティ*5の調査・共同研究 低炭素や大気汚染防止を目指した自動モビリティ*5の調査・共同研究 パートナーと自動モビリティ*5について協議・技術の確認を継続実施
輸送物冷却用ドライアイスの削減:機械式コールドボックス13,000本・保冷車1,200台へ代替 輸送物冷却用ドライアイスの削減:機械式コールドボックス9,000本・保冷車900台へ代替 輸送物冷却用ドライアイスの削減:貨物輸送トラック1,262台を保冷車へ代替
EV 1,500台 EV導入 500台 EV導入 331台
デジタル技術を駆使した運行状況の可視化とデータに基づく輸送の高効率化、エコドライブ促進 デジタル技術を駆使した運行状況の可視化とシミュレーションモデルを活用した車両大型化・高効率輸送、エコドライブ促進 運行の可視化データをもとに台当たり積載率を前年+9.0%向上
モーダルシフトの推進
(鉄道・海運での輸送180台)
モーダルシフトの推進
(鉄道・海運での輸送比率160台)
モーダルシフト実施。 
(鉄道・海運での輸送 1日約168台)
100%再生可能エネルギー由来電力を使用したモデル営業所の実証試験 100%再生可能エネルギー由来電力を使用したモデル営業所の実証試験 100%再生可能エネルギー由来電力の使用に向けてモデル営業所の実証を開始
タッチポイント(拠点)の集約・LED導入 タッチポイント(拠点)の集約・LED導入 ・タッチポイント(拠点)を集約
・457拠点にLED導入
計測とエネルギーマネジメントの最適化 エネルギーマネジメントの強化 エネルギーマネジメントの体制構築 EV運用オペレーションの最適化、充電電力平準化、拠点間電力融通に関するシステム構築を開始
財務分析と低炭素投資促進 シナリオ分析、財務計画への反映
(次期中期計画への反映)
簡易シナリオ分析と開示(財務情報含む) ・TCFD賛同表明を9月実施
・コーポレートサイト、統合レポートにて開示
インターナルカーボンプライシング(ICP)の運用と効果確認、投資指標への活用検討 インターナルカーボンプライシング(ICP)の設定 他社事例など情報収集し運用検討
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*1 日本国内連結および(株)スワンの自社排出(Scope1とScope2)
*2 tCO2e/営業収益1億円
*3 日本国内連結および(株)スワン
*4 海外連結子会社 Scope1とScope2
*5 自動運転や隊列走行等の自動モビリティ

関連するSDGs
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
13 気候変動に具体的な対策を

実績について

日本国内連結およびスワンのScope1とScope2のGHG排出量は、2020年度比8%削減の目標に対して、7%削減しました。再生可能エネルギー由来の電力への切り替えや車両変更などにより排出量を削減した一方、ワクチン配送のための冷蔵庫や空調機の増設、ドライアイスの使用などが増加要因となりました。今後、営業所や輸送でのエネルギーの効率的利用やドライアイスの削減、再生可能エネルギーの利用をさらに進めていきます。
海外連結子会社は、事業が小規模でヤマトグループの営業収益の3%に満たないため、これまで算定や目標範囲に入れていませんでした。2022年度に把握したデータをもとに、2023年度は前年度比3%削減の目標を掲げ、削減の取り組みを進めています。

その他の目標は、「サステナブル中期計画2023」をご参照ください。

気候変動緩和の取り組み

EV導入推進

ヤマトグループは、2030年までには電気自動車(EV)23,500台の導入を目指しています。
これまでも、輸送方法や距離に合わせた環境対応車両への入れ替え対応を積極的に推進しています。既にLPG車、CNG車(天然ガス)、ハイブリッド車などの低公害車の導入割合は全車両台数の7割に達している他、都市部における近距離輸送では電動アシスト自転車や台車などを多用することで、GHG排出量を抑えており、2002年から導入を開始した電動アシスト自転車は2022年度末で約3,750台の導入が完了しています。
中距離の輸送では、小型商用BEVトラック*1導入を2022年8月に開始しました。ヤマト運輸(株)として初めての2tトラックのEV*2導入は、2023年9月に開始しています。また、2023年11月から交換式バッテリーを用いた軽EV*3の集配業務における実証を開始しました。日中に太陽光で発電した再生可能エネルギー由来電力を充電した交換式バッテリーを使用することで、より効率的なエネルギーマネジメントを実現します。
長距離輸送は、GHG排出量削減が技術的に困難*4と言われていますが、課題解決に向けて挑戦しています。ヤマト運輸(株)はサプライヤーや他社*5と燃料電池大型トラックの実証を2023年5月から開始しました。輸送事業者としてエネルギー効率の高い輸送機器やGHG排出量の少ない車両を利用することで、当グループだけでなく、社会の低炭素技術への移行も後押しできると考えています。
詳細は、「サステナビリティトピックス」をご参照ください。

  1. *1日野自動車(株)が開発した「日野デュトロZEV」
  2. *2三菱ふそうトラック・バス(株)が開発した電気小型トラック「eCanter」新型モデル
  3. *3本田技研工業(株)が開発した「MEV-VAN Concept」
  4. *4IEA「Energy Technology Perspective 2020」
  5. *5トヨタ自動車(株)、日野自動車(株)、アサヒグループホールディングス(株)、NEXT Logistics Japan(株)、西濃運輸(株)
小型商用BEVトラック「日野デュトロZ EV」
小型商用BEVトラック「日野デュトロZ EV」
電気小型トラック「eCanter」新型モデル
電気小型トラック「eCanter」新型モデル
交換式バッテリー軽EV「MEV-VAN Concept」
交換式バッテリー軽EV「MEV-VAN Concept」
燃料電池大型トラック
燃料電池大型トラック

再生可能エネルギーの利用

ヤマト運輸(株)やヤマトオートワークス(株)、ヤマトシステム開発(株)は、再生可能エネルギー由来電力の利用を進めています。2022年度は、再生可能エネルギー由来電力の購入電力が約128,100MWh、羽田クロノゲートや厚木主管支店、中部ゲートウェイ等、自社の太陽光発電設備から約500MWh、PPA*1で約1100MWhを利用しました。結果、電力に占める再生可能エネルギー由来電力使用は、2021年度の10.9%から2022年度21.8%に向上し*2、再生可能エネルギー由来の購入電力だけで55,860tCO2以上の削減になりました。

  1. *1PPA: Power Purchase Agreement(電力販売契約)
  2. *2範囲は日本国内連結会社と(株)スワン
和歌山主管支店(和歌山県和歌山市)
和歌山主管支店(和歌山県和歌山市)
三ヶ月営業所(千葉県松戸市)
三ヶ月営業所(千葉県松戸市)
福井鯖江営業所(福井県鯖江市)
福井鯖江営業所(福井県鯖江市)

低炭素技術導入と輸送効率の向上

ヤマトグループは、輸送や事業所において積極的に低炭素技術を導入(調達)しています。サプライヤーと連携して開発した小型モバイル冷凍機*1はその一例で、冷蔵・冷凍宅配で使用するドライアイス(CO2)を削減することができます。さらに、物流拠点でのLEDの導入やモーダルシフト*2、非効率便の削減、共同輸送にも取り組んでいます。
共同輸送の詳細は、「パートナーと協働したグリーン物流」をご覧ください。

  1. *1株式会社デンソーと開発した「D-mobico」
  2. *2SHKライングループ傘下の東京九州フェリー株式会社と2021年7月から関東―九州間の海上輸送を活用したモーダルシフトを開始
小型モバイル冷凍機「D-mobico」
小型モバイル冷凍機「D-mobico」
LEDを設置した津南営業所(新潟県中魚沼郡)
LEDを設置した津南営業所(新潟県中魚沼郡)
フェリーによる海上輸送を活用したモーダルシフト
フェリーによる海上輸送を活用したモーダルシフト

低炭素な商品/サービスの拡充

ヤマトグループは、お客様の利便性向上と再配達抑制・GHG排出量削減を両立する低炭素な商品やサービスの拡充を進めています。詳細は、「環境商品/サービスの提供」をご参照ください。

ヤマト運輸(株)は、2024年1月に「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」の宅配便3商品について、カーボンニュートラリティ宣言を行いました。本宣言は、2022年度(2022年4月~2023年3月)において国際規格ISO 14068-1:2023*1に準拠したカーボンニュートラリティ*2を達成し、引き続きEVや太陽光発電設備の導入など、事業活動に伴うGHG自社排出量の削減に取り組むことで、2050年度までの宅配便3商品のカーボンニュートラリティの実現をコミットメントしたものです。なお、2022年度の未削減排出量*3分についてはカーボンクレジット*4使用によるオフセット*5を実施しました。2022年度のGHG排出量削減内容および2050年度までのGHG排出量の削減、除去、オフセットを含めたカーボンニュートラリティ維持のための計画を具体的に示した「PDFファイルを開きますカーボンニュートラリティレポート」を公開しています。 また、本宣言については、第三者機関であるBSIグループジャパン株式会社の検証を受け、宅配便3商品がISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティ*3であることの意見書を取得しています。
本宣言の詳細は、「新しいウィンドウを開きますカーボンニュートラル配送 宅急便」をご参照ください。

  1. *1カーボンニュートラリティを達成・実証するための原則・要求事項を規定した国際規格
  2. *2特定の期間においてGHG排出量が削減されたのち、GHG排出量がゼロ以上の場合はオフセットにより埋め合わせされている状態
  3. *3GHG排出削減の取り組みをした後に残るGHG排出量のこと
  4. *4GHG排出削減またはGHG除去による排出量相当分を取引できるようにした証書
  5. *5カーボンクレジットを使用することでGHG排出量を埋め合わせすること
カーボンニュートラル配送宅急便

パートナーとの協働

ヤマトグループは、共同輸送などのパートナーと協働したグリーン物流を推進し、業界全体の輸送効率化と燃料使用の低減に貢献しています。詳細は、「パートナーと協働したグリーン物流」をご参照ください。

気候変動への適応

ヤマトグループは、激甚化が進む自然災害に対して対策を強化し、レジリエンスを高めています。詳細は、「気候変動への適応」をご参照ください。

パフォーマンスデータ

ヤマトグループ(日本国内連結および(株)スワン)の2022年度のGHG排出量は、燃料使用などによる直接排出(Scope1)が約659,537tCO2 、購入した電気・熱の使用に伴う間接排出(Scope2)が約200,674tCO2でした。把握している温室効果ガス排出量の内、21%がScope1、7%がScope2となります。その他の間接排出であるScope3は、約2,215,691tCO2で全体の72%でした。
エネルギー(再生可能エネルギー由来電力含む)やGHG排出量の詳細は、「環境データ」をご覧ください。以下は抜粋項目となります。

温室効果ガス(GHG)排出

GHG排出量
温室効果ガス(GHG)排出量
GHG排出原単位
GHG排出原単位
  • 対象範囲は、日本国内連結会社および(株)スワンのScope1とScope2のGHG排出量(総排出量および原単位の算出に用いた排出量)
  • 算定方法や排出係数の詳細は、「算定方法・係数」をご参照ください
  • 第3者保証対象はヤマトホールディングス(株)の2022年度温室効果ガス排出量。詳細は、「環境データ」をご覧ください

* 主に再生可能エネルギー由来電力の使用率が向上したため、GHG排出原単位が下がった

Scope3*の排出 (2022年度)

カテゴリ 排出量(tCO2e) 排出比率(%)
1. 購入した製品・サービス 1,804,232 81
2. 資本財 154,002 7
3. Scope1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 133,474 6
4. 輸送、配送(上流) 関連性がない -
5. 事業から出る廃棄物 2,630 0
6. 出張 5,856 0
7. 雇用者の通勤 54,698 2
8. リース資産(上流) 関連性がない -
小計(上流) 2,154,893 97
9. 輸送、配送(下流) 関連性がない -
10. 販売した製品の加工 関連性がない -
11. 販売した製品の使用 60,763 3
12. 販売した製品の廃棄 35 0
13. リース資産(下流) 関連性がない -
14. フランチャイズ 関連性がない -
15. 投資 関連性がない -
小計(下流) 60,798 3
合計 2,215,691 100
  • 表の全体はスクロールバーを操作して確認してください
  • 表の排出比率は、Scope3の内訳です
  • 対象範囲や算定方法は、「算定方法・係数」をご参照ください

* Scope3は、Scope1とScope2以外の間接排出。

環境配慮車保有台数

エネルギーや気候関連の詳細情報は、ヤマトホールディングス(株)のCDP気候変動の質問書の回答でもご参照いただけます。

EVなどの低炭素車両へのシフトや電動アシスト自転車・台車等の使用を進めています(2022年3月時点で電気自動車を約870台、ハイブリッド車を約2,980台、電動アシスト自転車等を約3,750台保有。グラフ「環境配慮車保有台数推移」をご覧ください)。日本国内連結会社保有車両台数の71%が環境配慮車です。2022年8月から小型商用バッテリー式電気自動車(BEV)、2023年9月から電気小型トラック「eCanter」新型モデルを順次導入し、2030年までに20,000台のEV導入を目指しています。

環境配慮車保有台数推移(日本国内連結)
環境配慮車保有台数推移(日本国内連結)
EV導入台数推移(日本国内連結)
EV導入台数推移(日本国内連結)

気候変動の緩和の取り組み事例

事例1:再生可能エネルギー由来電力のエネルギーマネジメントを行うモデル店

ヤマト運輸(株)八幡営業所(京都府八幡市)は、2023年9月より再生可能エネルギー由来電力を活用したエネルギーマネジメントを行うモデル店として本格稼働を開始しました。
八幡営業所は、全国で初めて全車両EVで稼働する営業所です。太陽光発電設備と蓄電池を導入し、日中発電してEV充電や建屋電力の一部*を賄います。また、電力平準化システム により、夜間のEV一斉充電による電力供給ピークの偏りを緩和するなど、エネルギーマネジメントを行っています。

  1. *太陽光発電で賄いきれない電力分は、関西電力株式会社の「CO₂フリー電力」を購入しています。
屋根に設置した太陽光発電設備
屋根に設置した太陽光発電設備
営業所に配置されたEV
営業所に配置されたEV
EVの充電状況を確認するモニター
EVの充電状況を確認するモニター

事例2:地域と連携した取り組み

2022年7月に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティ社会の構築」プロジェクトに採択された、ヤマト運輸(株)のグリーンデリバリーの実現に向けた案件において、群馬県内におけるEV導入・運用、エネルギーマネジメントに向けた取り組みを進めています。2023年3月末時点で群馬県内にEVを50台導入しており、県内各地において順次施策の展開を行っています。
2023年6月に締結した、ヤマト運輸(株)と群馬県の「カーボンニュートラル実現に向けた共創に関する連携協定」によって両者の連携を一層強化し、カーボンニュートラルの実現および生活者・事業者・自治体の全てにメリットがある持続可能な社会の実現を目指します。

連携協定締結式
連携協定締結式
高崎正観寺営業所(群馬県高崎市)
高崎正観寺営業所(群馬県高崎市)