社会と企業のレジリエンス ~環境変化に負けない社会を支える~

日本全国で事業を行うヤマトグループは、自然や生物多様性の恩恵に支えられ、事業活動ができています。一方で、気候変動の影響や生物多様性の損失は深刻さを増しているといわれています。こうした環境変化に対して、私たちは社会的インフラとしての機能を果たすために事業のレジリエンスを一層高める必要があると認識しています。また、自社のみならず、ステークホルダーや地域社会のレジリエンスを高め、環境価値を生むために、多様なパートナーとの取り組みを進めています。環境方針のもと、環境と共に生きる社会をリードする物流インフラの在り方を日々、追求しています。

目標と実績

中期計画における目標と実績(2024)
マテリアリティ 2024年度目標 2024年度実績
社会と企業のレジリエンス
  環境変化に負けない社会を支える
  社会と連携した環境レジリエンスの向上の取り組み 再生可能エネルギーの提供準備 再生可能エネルギー由来電力などを提供する新会社ヤマトエナジーマネジメント(株)を設立
パートナー連絡会議開催(12回)
災害発生時の行動(対応)基盤構築
パートナー連絡会議開催(12回)
災害発生時の行動基盤として、災害発生時マニュアルを配備
環境商品/サービスの提供の取り組み ・GHG可視化ツールのリリース
・宅配便3商品のカーボンニュートラルを活用
・宅配便3商品のGHG排出量の可視化ツールの提供を一部地域にて開始
・宅配便3商品のカーボンニュートラルを活用した営業を推進
海外生活支援事業において新サービスを提供 美術品輸送用の汎用リターナブルBOXを開発
環境コミュニケーション向上の取り組み SX説明会年次開催、ESG対話20件/年 SX説明会年次開催、ESG対話21件/年
環境マネジメント強化の取り組み ISO14001のグループ会社への拡大を検討 ISO14001のグループ会社への拡大を検討
環境法令順守やマネジメント
協力会社やサプライヤーの環境認定、改善支援
環境法令順守やマネジメント
協力会社やサプライヤーの環境認定、改善支援
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その他の目標は、「サステナビリティ戦略・目標と実績」をご参照ください。

関連するSDGs
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
11 住み続けられるまちづくりを
12 つくる責任つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
15 陸の豊かさも守ろう
17 パートナーシップで目標を達成しよう

環境関連事業とサービス

グリーン・モビリティ事業

ヤマトグループは、パートナーとともに環境課題解決に向けて積極的に取り組む過程で、GHG排出量削減や持続可能で効率的な物流システムの構築などの知見とノウハウを蓄積してきました。それらを「グリーン・モビリティ」のビジネスモデルとして磨き上げ、サプライチェーンの持続可能性を高めるソリューションとしてお客様に提供しています。

EVライフサイクルサービス

車両を使用する事業者の脱炭素化に向けて、EVの導入・運用に関する支援をワンストップで提供する「EVライフサイクルサービス」を2024年10月より提供しています。
本サービスは、ヤマトグループが全国規模でEV導入を進める中で培った知見とノウハウを基盤として、EVの調達や効率的な活用ノウハウ、再生可能エネルギー由来電力供給、独自開発のエネルギーマネジメントシステムなどをパッケージ化して提供することで、車両を使用する事業者のスムーズなEV導入と活用を支援します。また、バッテリーの価値を考慮した残価設定や補助金の活用などにより、脱炭素と経済性の両立を実現します。
今後、車種・車格の拡大やバッテリーのリサイクル、交換式バッテリー対応EVの取り扱いなど、引き続き自社の脱炭素化を推進する中で得た知見をサービスに反映させ、事業者への提供価値を高めます。

ヤマトエナジーマネジメント

ヤマトグループは2025年1月に電力の調達と提供を手がけるヤマトエナジーマネジメント(株)を設立しました。電力小売事業者として市場や地域の発電所から電力を調達することで、電力量や再エネ電力比率、コストをコントロールし、安定的に再生可能エネルギー由来電力を調達できる体制を構築しています。
(株)JERA Crossとの連携のもと、まずはヤマト運輸(株)の全国拠点に対して、自社拠点における太陽光発電や地域発電事業者が発電した再生可能エネルギー由来電力などの提供を開始しました。今後、車両を使用する事業者に対しても電力供給を行うことで、物流の脱炭素化と地域経済の活性化に貢献していきます。

ヤマトエナジーマネジメント

共同輸配送のオープンプラットフォーム(Sustainable Shared Transport)

ヤマトグループは、持続可能なサプライチェーンを構築するため、企業間の垣根を超えた「共同輸配送」による物流効率化に向け、荷主企業や物流事業者など多様なステークホルダーが参画できる共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する新会社「Sustainable Shared Transport株式会社」(以下「SST」)を2024年5月に設立しました。
SSTでは、共同輸配送のオープンプラットフォーム上で、荷主企業の出荷計画・荷姿・荷物量などの情報と、物流事業者の運行計画などの情報をつなぎ、需要と供給に合わせた物流のマッチングを行います。また、地域の複数の物流網を集約する共同輸配送を実行するとともに、高積載で安定した輸配送サービスの提供を行います。
2025年2月より、宮城県から福岡県間において1日16便の幹線輸送の提供を開始しました。今後は対象地域やダイヤの拡充に加えて、マルチモーダルを推進し、共同輸配送を加速させていきます。

SSTの目指す姿

環境関連サービス

温室効果ガス排出量提供サービス

ヤマト運輸(株)は、2025年11月から法人顧客を対象に、「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」の宅配便3商品の輸配送工程で生じたGHG排出量を算定する「温室効果ガス排出量提供サービス」の提供を開始しました。本サービスの算定方法は、2023年3月に発行された物流領域におけるGHG排出量算定基準の国際規格ISO14083:2023*1に準拠しており、第三者機関(ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社)による妥当性評価を取得しています。このため、法人顧客のScope3*2に該当するヤマト運輸(株)の輸送によるGHG排出量について、より実態に即した算定が可能となりました。

*1 物流事業者全般(道路、鉄道、航空、海上、水上など)」を対象とした、輸送で生じるGHG排出量算定基準
*2 企業が間接的に排出するサプライチェーンでのGHG排出量

温室効果ガス排出量提供サービスの算定範囲

カーボンニュートラル配送

ヤマト運輸(株)は、2024年1月に「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」の宅配便3商品について、カーボンニュートラリティ宣言を行いました。本宣言は、2022年度以降、各年度において国際規格ISO 14068-1:2023*1に準拠したカーボンニュートラリティ*2を達成し、継続してEVや太陽光発電設備の導入など、事業活動に伴うGHG自社排出量の削減に取り組むことで、2050年度までの宅配便3商品のカーボンニュートラリティの実現をコミットメントしたものです。なお、各年度の未削減排出量*3分についてはカーボンクレジット*4使用によるオフセット*5を実施しました。また、第三者機関であるBSI(英国規格協会)の検証を受け、宅配便3商品がISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティであることの検証意見書および認証書を取得しており、各年度のGHG排出量削減内容および2050年度までのGHG排出量の削減、除去、オフセットを含めたカーボンニュートラリティ維持のための計画を具体的に示した「カーボンニュートラリティレポート」を公開しています。

*1 カーボンニュートラリティを達成・実証するための原則・要求事項を規定した国際規格
*2 特定の期間においてGHG排出量が削減されたのち、GHG排出量がゼロ以上の場合はオフセットにより埋め合わせされている状態
*3 GHG排出削減の取り組みをした後に残るGHG排出量のこと
*4 GHG排出削減またはGHG除去による排出量相当分を取引できるようにした証書
*5 カーボンクレジットを使用することでGHG排出量を埋め合わせすること

カーボンニュートラル配送宅急便

荷物の受け取り利便性向上

ヤマト運輸(株)は、顧客の多様な荷物の受け取りニーズに対応し、受け取り利便性の向上を図ってきました。
受け取り方を選択する手段として、会員登録すると希望の受け取り日・時間帯・場所を指定できる個人向け会員サービス「クロネコメンバーズ」を提供しています。
また、受け取り場所の選択肢を拡大するため、荷物の受け取り、発送ができるオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」のインフラを整備しています。さらに、2020年より、ご自宅の玄関ドア前などで非対面での受け取りが可能なEC向け配送商品「EAZY」を、2022年にはEAZYにおいてオートロック付きマンションでも「置き配」を実現する「マルチデジタルキープラットフォーム」サービスの提供を順次開始しました。2024年6月からは「クロネコメンバーズ」会員を対象に「宅急便」「宅急便コンパクト」の受け取り方法として新たに「置き配」を追加しています。

オープン型宅配便ロッカーPUDOステーション
置き配

電気自動車整備や充電設備施工管理

ヤマトオートワークス(株)では、電気自動車の整備や充電設備の施工管理等、低炭素車両の利用拡大に貢献するサービスを提供しています。サービスの提供に当たり、「低圧電気取扱業務特別教育」または「電気自動車の整備にかかる特別教育」を修了した784名を専門人材として社内登録しています(2025年11月時点)。電気トラックや電気バス等の整備実績を強みとして今後もサービスを提供し、物流業界の低炭素化を推進する役割を担いたいと考えています。

EV車両
海産品を集荷するセールスドライバー
EV整備

 

サプライヤーやパートナーとのエンゲージメント

サプライヤーとのエンゲージメント

ヤマトグループが目指すサプライチェーンについて共通認識を形成するため、「ヤマトグループ ビジネスパートナー行動ガイドライン」を定め、主要サプライヤーとの対話を深めています。
サプライチェーン全体の排出量(Scope3)の削減に向けては、サプライチェーンを構成する主要なパートナー企業との協働を開始しています。排出量を正確に把握する基盤を構築し、信頼性の高いデータに基づいた実効性のある削減計画の策定とその実行へとつなげます。
輸送の委託部分のGHG排出量把握に関しても協力会社と連携して改善を進めています。2024年度は、輸配送パートナーを対象とした排出量測定の仕組みを整備し、データの収集と蓄積を進めました。他サプライヤーも含め、サプライチェーン全体での管理体制の構築を推進しています。

パートナーとのエンゲージメント

ヤマト運輸(株)は、物流事業者として輸送における低炭素技術の利用や実証実験などにサプライヤーやパートナーと協働して取り組んでいます。

カートリッジ式バッテリーを軸としたエネルギーマネジメントの開発

GHG排出量削減に向けた各施策を推進するにあたり、物流業界の課題として、「EVの稼働と充電の両立」があります。EVの稼働と充電はどちらも日中の時間帯に発生するため、稼動と充電を両立する工夫が必要になります。また、再生可能エネルギー由来電力の急激な需要増による供給不足や、送電に必要な系統の容量不足などが懸念されています。これらの解決策とし て、ヤマト運輸(株)では、カートリッジ式バッテリーを軸とした、エネルギーマネジメントの開発に向けて、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社(CJPT)と着脱・可搬型のカートリッジ式バッテリーの規格化・実用化に向けた検討を進めています。また群馬県では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、エネルギーシステムの開発・実証を行うなど、EV運用方法の早期確立を目指します。

EV、PV、バッテリーの連携によるエネルギーエコシステムの将来ビジョン

スーパーフルトレーラ25

主要都市間の効率的な幹線輸送を実現するため「スーパーフルトレーラ25」(車両長25mの連結トレーラ。以下、SF25。)で物流他社と幹線共同輸送を行っています。本取り組みは2019年国土交通省の改正物流総合効率化法の認定を受け、効率化のための補助制度を利用しました。
SF25での共同輸送は、一般社団法人全国物流ネットワーク協会やその会員企業との協力により実現しました。同協会は、地球環境など社会の多様な利益と調和する物流の実現を図り、生活の向上等を目的にしており、GHG排出量削減に取り組んでいます。ヤマト運輸(株)はこうした目的に賛同し、会員としてグリーン物流などの取り組みに参画しています。SF25の走行に際しては、会員と共に「特殊車両通行許可基準」の緩和を支持し(車両長の制限を従来の21mから25mへ緩和)、実証走行実験に参加しました。その後、2018年度に国土交通省が特殊車両通行許可基準を改正し、SF25を使用した共同輸送を開始することができました。SF25は、1台で大型トラック2台分の荷物を運ぶことができるため、高い輸送効率とGHG排出量の削減が見込めます。

スーパーフルトレーラ25
スーパーフルトレーラ24台、牽引するフルトラクタは15台稼働(2025年3月時点)

環境レジリエンスの向上

気候変動への適応

ヤマト運輸(株)は、激甚化が進む自然災害(台風・大雨・大雪など)に対して「自然災害の手引き」を整え、より対策を強化し、レジリエンスを高めています。気象条件や災害発生までの時間帯別に行動基準を設け、サービスへの影響に関するお客さまへの案内や社員・協力会社への安全確保・迂回の案内等を行っています。特に、深刻な影響が懸念される場合は、代表取締役社長を本部長とする災害対策本部を立ち上げ、関連部署が連携して復旧や支援に必要な情報を共有し、速やかな事業継続に努めています。事業復旧後は、地方自治体等と連携して救援物資の輸送にあたり、被災地の支援にも協力しています。また、継続的に実施しているのが、日本全国の拠点の水害リスクの評価や定期的な訓練です。荷物・車両・設備の被災防止のための保全や輸送可能なルートでの事業継続など、状況に応じて柔軟かつ迅速に対応できる力を毎年向上させています。
2020年からは安否・被災状況確認システムを導入し、初動の安否確認と発災時の被災状況を報告することで、対策本部との連携を強化し、災害に対して柔軟かつ迅速に対応する力を向上させています。また、2023年からはリアルタイムで気象データや災害情報を把握できる危機管理情報システムを導入し、物流拠点情報を登録することで、大雨や大雪などの災害が迫った際に、システム上で把握された気象情報や交通渋滞の情報、ハザードマップを重ね合わせ、その地域の状況を把握できるようにしています。
また、平均気温の上昇に対しては、ベース店や営業所での作業に適した冷風機の導入や社員の制服に吸汗速乾の生地を採用するなどの適応策をとっています。今後も社会的インフラとして気候変動に適応したレジリエント物流を目指していきます。

フォークリフトの浸水対策 浸水時、安全確保のためのクールボックス固定
ヤマト運輸(株)の水害訓練(左:フォークリフトの浸水対策、右:浸水時の安全確保のためにクールボックスを固定)

環境コミュニケーション

ステークホルダーや地域社会との環境コミュニケーションを大事にし、情報開示の拡充や強化、投資家の皆様との対話などの双方向コミュニケーションに努めています。

社会への情報発信と教育

ヤマトグループの環境の取り組みは、ニュースリリースや企業CM、動画、ハンドブック、SNSなどで情報発信を行っています。
また、環境に関する社会の動向や、ヤマトグループの環境の取組に関する重点項目などについて理解を深めるため、社員に対する教育機会を設けており、2024年度は、約29,270名が環境関連の教育を受講しました。

ヤマトグループサステナビリティハンドブック
ヤマトグループサステナビリティハンドブック
動画で学ぶヤマトのサステナビリティ
動画で学ぶヤマトのサステナビリティ

地域との環境コミュニケーション

ヤマト運輸(株)は、次世代を担う子どもたちへの環境教育をサポートするため、当社の社員が全国の学校に出向いて授業をおこなう「クロネコヤマト環境教室」を2005年10月より実施しています。2023年10月には学習指導要領に合わせて、小学校4年生~6年生を対象としたプログラムにリニューアルしました。

クロネコヤマト環境教室
クロネコヤマト環境教室

 

生物多様性の保全

豊かな社会を支える自然と共生するために、ヤマトグループは地域の生物多様性の保全に取り組んでいます。

事例1:いきものの生息地の復元

物流ターミナル「羽田クロノゲート」には、自然環境との共生を目指した「(施設名)和の里」を設けています。そのエリアには、地域の生態系に合う樹木を植栽し、自然石材を利用したビオトープを設置しています。

羽田クロノゲート
羽田クロノゲート
自然石材を利用したビオトープ
自然石材を利用したビオトープ
地域の生態系に合う植栽
地域の生態系に合う植栽
ビオトープ等、いきものの生息地の復元面積
(m2
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
2,800 2,800 2,800 2,800 2,800
  • 範囲:国内連結会社および(株)スワン

事例2:海の保全活動

近年、海水温の上昇に伴うサンゴの死滅が問題になっています。沖縄ヤマト運輸(株)は、自治体や地域住民・企業によるサンゴ保全活動「チーム美らサンゴ」に参加しています。チームの一員として、サンゴの苗づくりや植え付け、啓蒙活動などを支援しています。
また、県内各地でビーチクリーンなどの地域清掃活動を行い、社員の環境意識の向上や、美しい沖縄の海の保全活動に取り組んでいます。

サンゴの植え付け
サンゴの植え付け
ビーチクリーン
ビーチクリーン

サステナブルファイナンス

環境に配慮した取り組みを積極的に推進するための資金調達手段として、ヤマトホールディングス(株)として初めてのグリーンボンドを、2023年7月に発行しました。
国際資本市場協会(ICMA)が定めるグリーンボンド原則(GBP)2021、環境省のグリーンボンドガイドライン(2022年版)などで定められた4つの柱(1.調達資金の使途、2.プロジェクトの評価及び選定プロセス、3.調達資金の管理、4.レポーティング)に従い、「ヤマトホールディングス グリーンファイナンス・フレームワーク」を策定しました。本社債の調達資金は、各拠点や事業所におけるEV・太陽光発電設備などに充当します。